第1章 壱.一目見たその時から
「星の呼吸 壱ノ型ーー…」
「な、貴様…」
刀を両手で横にもち、腰を低くし足を踏み込む体制で構えたその瞬間、空気が一変した。
それを察した鬼はまるで金縛りにあったように固まった。
「流星」
一瞬光るように見えた。
そして綺麗に真っ直ぐ踏み込み、目で追えないほどの早さで鬼の頸をはねた太刀筋……一本の光が踏み込んでから頸をはねるまでを描いて消えたのだ。
思わず見とれた。興奮した。
太刀筋が光の線を描いて消える。
そんな綺麗な呼吸今まで見たことねぇ!早ェ!俺すら追いつけなかった!
構えて相手を捉えたときに一気に殺気がピリピリと肌に刺さった。
それまで全く感じなかった殺気を…!
伊黒も俺も思わず唾を飲んでを見つめていた。
「目と目があっただけで動けなくなるなんてしょうもない…。
行きましょうか」
日輪刀をしまい、手をパンパンとはたきながら何事も無かったかのように荷物をもち歩き始める。
こんなに何にも考えてなさそうで生気がない女が…?
「……行かないの?」
「ん、あぁ、行くか」
なんか、適当に水の呼吸でも使うんだろうとか考えてた自分が恥ずかしいわ。
「なんの派生とか育手とか知らねェが、綺麗な呼吸だな」
「……へー、実弥さんってそういう事言わない人かと思った」
「なんかちょくちょく煽ってくんなァ?」
「よせ不死川、悪気はない。ただの感想だ」
「もっとタチ悪ィじゃねぇか」
こいつは今きっと話をはぐらかした。
無理もない。今日出会ったばかりだし、そんなやつに過去を話したい気持ちにはならねぇだろう。
昔伊黒と関係があるなら尚更、お互いの過去が分かるようなことがあるんだろうから慎重にもなるはずだ。
……もうちょい、仲良くなったら聞いてみっか…。
別に深い意味はねぇ。
ただ呼吸に興味をもっただけだ。
それにあれだ、伊黒と同様少しは気が合うみてぇだし。
一緒にいると調子は狂うが……悪くはねぇ。
第一印象は変なやつ。
次は思ったよりまともなやつ。
そして、少し興味を持った。
それが出会って一日目の印象だった。