第4章 肆.命ある限り ※
時透は相変わらずにお礼を言っていて、玄弥も一緒になってお礼を言っていたのが微笑ましかった。
胡蝶は早々に戦線離脱したことを不甲斐ないと嘆いていたが、そもそも上弦の弐に一人で立ち向かったんだ、無理もない。
上弦の参ですら冨岡と竈門で殺してんだ。助かったのが奇跡だろう。
「死ぬつもりだったのに、助かってしまうとこんなにも死ぬのが怖いものだと実感しますね……」
「さんが助けてくれなくて体半分にされて死んでたらって思うとゾッとする」
「それはわたしもそう思う。
死ぬにしても無惨と一緒に消滅なんかしたくなかったからよかった。
でも小芭内…目が…」
「片方は瞳まで傷がいってないから大丈夫だ。
もともと弱視だしな。そっちはなくなっても変わらん」
「よかったわ〜〜」
「甘露寺が見えないまま一生を終えるのは辛い」
「伊黒さんっ…!」
クソ野郎。呑気なこったなァ。
隣の甘い雰囲気に不貞腐れていると、遠くからわんわんと泣いている声が聞こえる。
これは我妻だな。
思った通り我妻と猪頭が隠におぶられ病室に入ってくる。
俺らがいるから怖いだの、でもや甘露寺、胡蝶がいるのはまるで天国だのなんだの騒いでいる我妻だが、胡蝶姉に後で部屋を変えると言われ複雑な表情を浮かべていた。
「炭治郎は?」
「炭治郎なら今来るよ」
その会話の後すぐに、煉獄の馬鹿でかい声がここまで響く。
あぁ竈門が帰ってきたんだなとすぐに分かった。
竈門、胡蝶の継子に着いてくるように禰豆子も一緒に入ってきた。
……散々ひでェことしたからなァ。
何となく気まずくて目を逸らした。
その後にぴょこっと冨岡。
「胡蝶……」
「冨岡さん、利き手が……」
「それはいい。無事でよかった」
「……あら」
そして命の助かった隊士たちがチラホラと入ってきた。
しかし悲鳴嶼さんは一向に来なかった。
無事生きて帰ってこれたことを喜び合う皆だが、悲鳴嶼さんが戻ってこないことに触れられなくて次第に空気が重くなっていった。
煉獄と宇髄も待っているのか中には入ってこない。
会話も少なくなり、手当に必死になる胡蝶姉と蝶屋敷の女たちがバタバタと動く音だけが聞こえるようになった。