第4章 肆.命ある限り ※
うるさいぞ、とほんのり顔を赤くしてのことを制する伊黒を見て、思わず笑ってしまう。
笑ってしまったことに更に機嫌を損ねそうだが、今回は何も言われず終わった。
幸せ効果だな。
「弟くんが、帰ってきたら実弥さんの好物作っておくから夜ご飯一緒に食べましょうって言ってくれました」
「……そうかァ」
「おはぎ以外に好物あるんですね」
「馬鹿にしすぎだろ」
のおかげで玄弥も助かった。
あれは一か八かの賭けだったのかもしれない。
玄弥も助かっても無事だったとはいえ、もうあんな風に自分を犠牲にして人を助けるような真似はしないでほしいものだ。
「テメェは少し自分のことも大事にしてくれ」
「これからはそうするつもりですよ」
「柱の皆様、蝶屋敷に移動しますね」
隠がやってきてそれぞれ一人ずつここにいる四人をおぶろうとしていたが、伊黒は立ち上がり甘露寺をそのまま抱えていた。
「俺ももう立てるから大丈夫だ」
そう隠にいってを抱え伊黒と一緒に蝶屋敷へと歩き始めた。
「二人とも無理しないでおぶってもらえばよかったのに…」
「俺はまだしも不死川なんておぶれる隠いないだろ」
「あぁたしかに……悲鳴嶼さんどうするんだろ…」
「……担架で四人掛かりだろォなァ」
「あぁ…」
甘露寺がすっかり顔を赤くしてしまい、しおらしく大人しくしている。
あの、重くないかしら?とたまに声を掛けているのが聞こえる。
はというと照れもせず何も思ってなさそうだが……少しは甘露寺みてぇな反応してくれてもいいのに…。
というかこいつが照れるのなんて見たことあるか?
ちょっと褒められてテレッていうのは何回かあるが……恋愛に関してはいつも余裕そうな表情しか知らない。
「なんですか?」
「……チッ」
「えっなに?」
急に見つめられて、そして急に舌打ちされて驚く。
理不尽極まりないんですけど?と不満そうに嘆いている。
うん、俺がやられてもそう思う。
少しイラついたんだからしょうがないだろ。