第4章 肆.命ある限り ※
「愈史郎は」
「影で悲鳴嶼さんの手当をしてくれている」
「痣の寿命を打ち消す薬が……」
作成途中だったというその薬。
胡蝶と珠世が作っていたというがまだ出来ているか分からないそうだ。
悲鳴嶼さんは27だ。
痣の出たものは25で死ぬというが……それが無ければどうなる。
「愈史郎くんならきっとやってくれるわ」
「そうだな」
ん、なんだこの二人の雰囲気は……。
俺らの治療が一旦落ち着いたようで、隠たちは別の怪我人の救護に向かっていった。
残念ながらまだ動けないので地面に横たわったままだが。
そして冨岡も炭治郎たちの元へと戻っていく。
俺の隣には。
その斜め上ほどに伊黒と甘露寺。
怪我こそは酷くても、生きててよかったと改めて思った。
「わたしが小さいころ囚われてた時の鬼に会いました」
「生きてやがったのかァ?」
「はい。当時の炎柱に頸を斬られる前に自分で斬って死んだふりをしたあと逃走してたみたいで。
わたし自分が鬼じゃなかったら勝ててませんでしたよ」
仰向けのまま空に手を伸ばし、自分の手をグーパーしながら人間に戻ったことを実感しているようだった。
そしてその鬼が自分の父親だったことを無惨に告げられたと話す。
ショックは計り知れないだろう。
「あーあと、わたしの星の呼吸って、月の呼吸の派生なんですよ。
母が隠していた書物に月の呼吸のことが書いてあったんです。
ほとんど読めませんでしたが…鬼になってたのを知ってたらもっと調べたのに」
「黒死牟……あいつとなんか関わりあんのかァ?」
「うーん…分かりませんけど、関わりはないと思います」
あれが父と分かっていたら、もっといろいろ聞きたいことがあったのに。と少し悲しそうに言っていた。
それを黙って聞く甘露寺と伊黒。
「でももう悪い鬼がいない世界になったから…いっか」
「そうだな。もう日輪刀も使うことがないのか……。
それはそれで少し寂しいな」
「ねっ」
「そうだわ!ちゃんと不死川さんの結婚式と、わたしたちの結婚式をどっちを先にするか決めないと!どうしましょう伊黒さん!」
「まず皆の体調が万全になってからの話だな…」
「……あ? テメェらいつの間に」
「さっきの間ですよ実弥さん。
死にかけないと想いを言わないなんて…」