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八重歯と稀血

第1章 壱.一目見たその時から




「あーもう持てないなぁ。
また明日の朝取りに来ますのでお代だけお願いします」

「まいどあり」

「じゃあもう帰りましょ。日が暮れちゃう」

「とんでもねぇ量の買い物だなァ…」


伊黒はと同じくらいの量しかもたねぇから、ほとんど俺が持つ羽目になっちまった。

クソ、柱になってまで荷物持ちだ。
しかも相手は甲ってだけで柱でもねぇ。


「いいご身分だなァ…さんよォ」

「あれ?怒ってます?さすがに買い過ぎましたね、ごめんなさい。
……ちゃんと名前で呼んでくれるんですね?」

「あ?」


名前で呼んでたか?
こいつといると振り回されるな……。

もう余計なことは喋らねぇようにしよう。

しかし、最初は無口そうに見えたが無口って訳でもねぇ。
ボーッとしてそうだが、意外とハッキリ物事を捉えて喋るし、生気はねぇが笑う時は笑う。

思ってたより、ちゃんと人間味のあるやつだった。

それが、こいつに対する印象だった。



「……鬼の気配がする」


日が暮れ、屋敷へ戻る道へ繋がる森を話しながら歩いているとは急に立ち止まりそう言った。

なんだ?どっから……そう思ったとき、俺も伊黒も確かに鬼が近くに潜んでいることが感じられた。

3人ですぐさま木の影に隠れる。

しかしこいつ、宇髄みてぇに耳がいいのか?
俺はもちろん伊黒の蛇より早く気付きやがったぞ。

身を潜めて鬼の姿を確認するまで待つ。
が隣で目を瞑ると、スゥゥ…という呼吸の音が聞こえた。


「わたし一人で行ってくる」

「おい何をした?」

「呼吸の型で空間を少しだけ把握できる。
鬼は今こっちに向かってきてて、そろそろ見える……ほら。
全然弱そうだし一体だけだから…、荷物見ててほしい」


そう言ってスラリと刀を抜く。
その刀身は透き通っているほど綺麗な黒と紅の刀身だった。

なんだあんな色見たことねェ…。
さっきの呼吸の音は…? 聞いた事がねぇ……。


「やっぱりいたァァ!美味そうな匂いがする女だァ!!!」


鬼はに気付き、一直線に正面から飛びかかってくる。
生気もなければ殺気もない。鬼から見たら恰好のエサだ。


「オイ伊黒ほんとにあいつ大丈夫かァ…?」

「分からん……実力も知らないんだ俺は…」



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