第4章 肆.命ある限り ※
鎹鴉が酷く騒ぎはじめる。
……早く行かないと。
「わたし行きます」
「え、でも!」
隠に腕を捕まれ顔を見ると、泣きそうな顔でこちらを見ていた。
確かにまだ回復しきれていない。
でもわたしは行かなきゃいけない。
「冨岡さんと炭治郎くんが鬼舞辻無惨と戦ってる。
はやくいかないと」
そういうと、建物が激しく揺れ始める。
「……崩れるのかも」
「え?え?」
慌てる隠を引き寄せ、無一郎と弟くんと合わせて三人抱き寄せる。
しかしわたしは体を大きくしたり、変形させることができないのだ。
だめだ、このまま崩れたら押しつぶされる。
そう思った時、体が元に戻りつつある弟くんが無一郎を守るようにわたしの隣にきて、わたし諸共抱きしめ身を寄せた。
その瞬間、建物が崩れ落ちる。
背中にかかる建物の重圧に押しつぶされそうだった。
「……大丈夫、すか」
「弟くんは?」
「なんとか…」
崩壊がおさまり、無事を確認したところで落ちてきた破片をどかす。
……わたし鬼じゃなかったらここにいる人と一緒に死んでたな。
「え、もう鬼化してないのに大丈夫なの…?」
「俺丈夫だから…」
「不死川兄弟は丈夫なのね…」
「兄貴ほどじゃないですけど…」
やっぱり実弥さんはとりわけ丈夫なのか。
震えている隠の背中をさすり落ち着かせる。
「ごめん、わたし行かないと。
弟くん、この二人を守りながら安全な場所に連れて行ってちょうだい」
こくんと頷く弟くんをみて、思わず手を握る。
顔が赤くなっていってるのに気付いて申し訳ないとも思った。
「本当に生きててくれて良かった。ありがとう。
あと助けてくれてありがとう、よろしくね」
「こちらこそ、ありがとうございます…。
無事に戦いが終わったら、兄貴の好きな飯作るんで三人で食べましょう」
「ありがとう!楽しみにしてる!」
心強い応援をもらい、鬼舞辻無惨の元へと無我夢中で走った。
そうだ、鬼舞辻無惨を倒して、人間に戻って、そして幸せに暮らすんだ。
誰一人死んではない!
怪我をしてても、後遺症が残ってても、生きてることに変わりはない。
涙が溢れた。
早く、終わらせよう……!