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八重歯と稀血

第4章 肆.命ある限り ※





ーー……


「弟くん、大丈夫?」

「ありがとうございます、おかげさまでなんとか…」


隠達が慌ててこちらへ向かってくる。


「様!無事でしたか!」

「伊藤、わたしはいいから、この二人を」

「俺はまだ戦…」

「だめだよ」

「でも兄貴が」


まだ戦う意思を見せる弟くんを制止する。
体の再生が遅いし、限界なんだと思う。

ここで再生したからと戦いに行ったら、わたしが助けた意味がなくなってしまう……。


「大丈夫、実弥さんは戻ってきてくれるし、実弥さんの事を思うなら自分の体のことを考えてほしい。
わたしは弟くんが死んで、実弥さんが悲しむところを見たくない」

「……でも」

「わたしが今回復できたら助太刀にいくから安心して」


そうは言っても、実弥さんの血液を飲んだらフラフラするのだ。
これが前言ってた話か。

飲むとなるとまた更にその効果は絶大なようだ。
でも同時にとても力が漲った。


「様、大丈夫ですか?」

「なんかちょっと酔ってるような感覚だけ」

「兄貴の血で…」

「好きな人の血液飲むとか、なんかあれじゃない?
こう……なんか…はれんち」


隠と弟くんがボッと顔を真っ赤にする。
こんな状況だが思わず笑ってしまった。


「様……」

「ごめんごめん」


だいぶ調子も戻ってきたようだ。
稀血のせいか、前よりもずっと力が出る気もする。

ただ不安なのが、鬼舞辻無惨に狙われて吸収されてしまわないかだ。
わたしが吸収されてしまうと鬼舞辻無惨は太陽を克服してしまう。

あいつを倒すためには太陽の光を浴びせる以外にない。

つまりわたしが吸収されてしまえば勝てなくなってしまう。
それが怖い。

……人間に戻る薬を使っておこうか。
いや、これを使ったらしばらく動けなくなるだろうし、盾になれない。


「あの」


グルグルと考え事が頭を巡る中、目の前で手をヒラヒラして弟くんが話しかけてきていた。


「ん?」

「……その、俺の事を気遣ってくれて有難いんですけど、自分のことも大事にしてください。
鬼だからって無理してると、兄貴に怒られます」

「……そうね、ありがとう」


モジモジしながら言う弟くん。
ここまで恥ずかしがり屋ではないけど……似てるなぁ、かわいい。



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