第4章 肆.命ある限り ※
こちらを向いているその顔はとても切なそうで、人間に近い元の姿へ戻った鬼の体はわたしを抱きしめていた。
ゴロンと音を立て落ちた頭。
「すまなかった、守りたくて強さを求めたザマがこれだ…」
「……」
「酷いことばかり…すまなかった、…こ」
誰か知らない人の名前を言いながら消えていく。
知らないうちに人間の頃の記憶がその人を求めて、似ていたわたしが気に入られたとか、そういうところかもしれない。
……全く同情は出来なかった。
謝られてもつけられた傷は消えないし、殺したところでその傷が癒えるわけでもない。
殺してもなお、殺し足りないくらいだというのに……。
「、他ノ柱ノ応援イケルカ」
「いける、どこに行けばいい?」
「上弦ノ壱、無一郎、実弥、弟、悲鳴嶼サン戦ッテル」
伍ノ型 天体観測
これで近くの鬼や人間の場所が把握できる。
「ちょっと待って、しのぶちゃんが」
「シノブチャン、意識不明、吸収サレカケテイルトコ、カナヲ助ケタ。
上弦ノ弐ハ猛毒ニヨリ、勝機アリ」
「……わかった、じゃあ実弥さんのとこにいく」
呼吸を整え、血液を飲む。
だめだ、このまま消耗し続けると持たないかもしれない。
いま実弥さんのところに行くのは、一か八かだ……。
稀血を前にして自我を失ってしまったらどうしよう……。
しかし少しでも鬼舞辻無惨と戦うための戦力を残すために、無我夢中で上弦と戦う四人の元へ急いだ。
そして鬼の元へ斬り掛かる無一郎が見えた。
みぞおちに剣が刺さるのと同時に、その鬼が技を放とうとしている瞬間を感じた。
何も考える暇もなく、その鬼の刀の前に立ち盾となる。
「……ッ、」
「さん!!!!!!」
「むい、無事…?」
もうこの子は限界だ。
斬られた体半分を再生し、抱きかかえて離れたところに横に寝かす。
そこには弟くんもいた。
「弟くん!……鬼まだ食べられそう?
わたしの体なら、負担もそんなにないと思うけど、再生できるくらいにはなると思う。
後で怒られるかもしれないけど死ぬよりマシだから、早く、ほら」
「え…あ……」
刀で自分の腕を切り落とし、弟くんへと差し出す。
むいは既に気を失ったようだが、大丈夫だ、死んでない。
弟くんもきっと大丈夫……。