第3章 参.役に立たない誇り
「しのぶちゃん、珠世さん」
「さん、お体の調子に変わりありませんか?」
「……さん!」
胡蝶の継子に案内され通された部屋には、二人きりでこもって何かをしていたようだ。
珠世というやつは初めて会うことになる。
……そうか、この人のおかげか。
「しのぶちゃん、連絡出来てなくてごめんね。
いっぱいお世話になっていっぱい心配と迷惑かけてごめん」
「いいんです!こうしてもどってきてくれただけで……
珠世さんと会った時にお話は聞きました。本当によかった……」
「珠世さん、この方がお話していた実弥さんです」
「……のこと、どうもありがとうございます」
「あら不死川さん…珍しい…」
「私は出来ることをしたまでです。
さんの精神力があったからこそこうして普通でいられるんですよ」
しっとりとした声で静かに喋る。
今は鬼舞辻無惨を倒すためにこちらと協力してくれていると教えてくれた。
「じゃあ、わたしは他の方にも挨拶をしなければないので…お先に失礼しますね」
「あ、さん、血液は足りますか?」
「……足りなくなったら俺の血でも構わねェがダメなのか?
どうせ他のやつの血を飲むくれぇなら」
「いやなんかやっぱりそれは倫理に反するというか、」
「よだれが凄いぞお前……。
言ってることと表情が正反対だ…」
「輸血と称してもらっている血ですから…している事は同じですしね。
不死川さんがいいと言うならいいとは思いますが……飲む量も少量で充分ですし」
「じゃあそうしろォ。
わざわざ血の補充しにくんのも面倒だろ」
稀血であることからやはり体はそれを欲するらしいが、それを飲むこと自体に問題はないという。
別に俺の血ならいくらでもやってやる。
「言っときますけど、めちゃくちゃ刺されたりして飢餓状態になったときとか不安定になりがちなのでそうなる前に離れてくださいね」
「それは気をつけるべきですね」
「……おう」
「しのぶちゃん、カナエさんによろしく」
「はい、お気をつけて」
蝶屋敷を去り、一番先に行くところはどこにしようか迷っていた。
ここは柱稽古の順番でまわって行こうということになった。