第3章 参.役に立たない誇り
「じゃあ俺、一旦悲鳴嶼さんの所でもう一回修行してきます!」
「一旦ってなんだァ? 戻ってこなくていいし金輪際関わんな」
「さねみ、またね」
「……クソっ、クソ野郎…」
「禰豆子に弱いのな。じゃぁ俺も戻るわー」
「おー行け行けうるせェ」
ようやくうるせぇのがいなくなった。
隠が用意してくれたおはぎと、竈門が持ってきたおはぎでもうおはぎだらけだ。
くそ、さすがにこの量はきついだろ甘露寺でも呼ぶか……。
そう思った時、後ろから気配も何もなく、いきなり大きな音が鳴り響いた。
「ヒィィィィ!!!!」
「何事だァ!?」
屋敷から距離をとり、後ろを振り向くと屋根に何かが降ってきたようで穴があき土埃が待っている。
そして姿を現したのは、髪が肩につかないほどまで短くなっただった。
「……、おまえ…」
「実弥さんごめんなさい、急に出てきて驚かそうと思ったら、木から落ちちゃって着地しようと思ってこんなことに…」
「……は?」
「隠の人達もびっくりさせてすみません…急襲じゃないです…」
テレッと頬を染めて頭をポリポリとかいている。
あれ、こいつ…どうなってんだ?
「待てどういう事だ、いや、どうでもいい、会いたかった」
「……はい、わたしもです」
「ごめんな、助けてやれなかった…ごめん…」
「助けてくれてましたよ?
鬼になったあの時そばにいた人が実弥さんじゃなかったらどうなってた事か」
に駆け寄りキツく抱きしめる。
こいつこんなに華奢だったのか…それとも痩せたのか…。
「実弥さん、分かると思いますけどわたし鬼ですよ?
稀血ならもっと警戒してくださいよ」
「腹減ったら喰っていいよ」
「何言ってんですか」
そう言われても、離す気にはなれなかった。
の匂いがする。腕の中にいる。
その事だけを今は感じていたかった。