• テキストサイズ

八重歯と稀血

第3章 参.役に立たない誇り





「……こいつの顔みたかァ?
今まで見たことねェくらい苦しくて、切ねぇ顔してた」

「よもや、自分達が竈門少年を攻めておいて…こうなるとはな」


小さな屋敷で膝を抱えて小さく座り込む皆。
その目線はぐっすりと寝ているの姿だ。


「だが…人を殺す前に、殺すべきだ……」

「伊黒さん…っ」

「起きたとき、暴れたら……諦めましょう」


この呪いがある限り、屋敷方面には戻れねぇ。
薬の効果自体はもうそろそろ切れる頃だ。

切れても竈門妹の例があるから、すぐに起きるとも限らねぇが。


「元水柱の鱗滝さんは、人は守るものと禰豆子さんが眠っているときに教えていたそうですよ。
不死川さんや煉獄さん、伊黒さんが何か語りかけておいたら効果あるんじゃないですか?」

「じゃあみんなで語りかけましょうよ!」

「うむ!!俺は尊敬しているぞ!
人として、鬼殺隊としての誇りを忘れるな!」

「……俺はこういうの苦手なんだが。
の強さは人を守るためにある…忘れるな……
これでいいか…」

「伊黒さん素敵!
ちゃんの好きな食べ物沢山作って待ってるからね!」

「……俺は…」

「一回わたし達出ますから、言いたいこと言ってあげてください」


そう言ってそそくさと出ていく。
いやおい今起きて襲われたらどうすんだよ。

……まァ、いいか。


「の強さは人を守るため…か、その通りだなァ。
俺らは仲間で家族だ。人間みんなそうだと思って戦ってた事だけは忘れんな。
……その綺麗な心が好きだ」


そうだな。
俺はきちんと気持ちを口にしたことがなかったなァ。

「……人間に戻ったら、結婚するか」

の気持ちを聞いたことはねぇが……もし俺と同じように思ってくれてるなら二度と辛ェ思いはさせねぇ。


閉じている目から、またポロポロと涙が流れているのが見えた。


「おい」


外にいる胡蝶たちを呼び戻す。


「……必死に抗っているのかもしれませんね」


それを見るのも辛いと言ったように涙を拭いてやる甘露寺と、自分の羽織りを布団代わりに掛けてやる胡蝶。

煉獄と伊黒は、とにかくつらそうな表情で固く拳を握っていた



/ 100ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp