第1章 壱.一目見たその時から
「俺は不死川実弥。よろしくなァ」
……伊黒もってやつも困ってそうだから、なんか話してあげねぇとと思って唐突に自己紹介しちまった。
宇髄あの野郎こっち見て笑いこらえてやがる。
「はい、よろしくお願いします」
口元を手で隠しながら、ニコッと笑うと同時に風が吹く。
甘い匂いが風に乗り、それも相まって不覚にも目を奪われてしまった。
「なんだ、笑うんじゃねェか」
「はい? ……柱の方って息するようにケンカ売るもんなの?」
「違うこいつは多分そういう意味じゃない。
その喧嘩脳は昔から変わってないんだな…ここのやつらの話は気にするな」
「鏑丸可愛い」
「おい話を聞いているのか」
なんか、掴みどころがねぇやつ。
どんな呼吸を使うんだ? 水っぽいよなァ。派生か?
冨岡と一緒かぁ、可哀想だな。
こういう不思議系はだいたい水とか水の派生の呼吸つかってんだ。
知らねェけど。
「今日から屋敷を使ってもいいってことと、今日は非番にしてくれると言っていたので、わたしそろそろ屋敷の中見に行って買い出しに行ってきますね」
「買い出しなら隠が行ってくれんだろ?
そういう時こそ派手に使ってやんねぇと」
「これから大変だろうから今日は休ませます」
「優しいんだな…南無…」
「な、泣かせてしまった…?」
「き、気にするな…」
「まるで俺が地味に嫌なやつみてぇになったわ」
伊黒が買い出しの荷物を持つために一緒に着いていくことになったようで、どうせ暇だろとか言われて俺も着いていくことになってしまった。
隠が来てぺこりと頭を下げて挨拶をする。
「様の屋敷のお世話をさせて頂く伊藤というものです。
よろしくお願い致します」
「伊藤さん、これからよろしくお願いします」
「他にもいますが屋敷に行けばいますので……えっと、蛇柱様と風柱様もご一緒で…?」
「そうだが」
「う、はい、かしこまりました」
「なんだ?何か問題でもあるのか?」
「違います違います!その、仲がよろしいようで!」
「ちょっと小芭内やめて睨まないで。早く行こう。ほら、不死川さんも」
伊黒と俺の腕を引き、連れていかれる。
こいつ実は伊黒のこと名前で呼んでんのか。
ふとした時に出た名前呼びに、昔から付き合いがあることが伺えた。