第1章 壱.一目見たその時から
スッと静かに小さく胡蝶が手を挙げているのが視界に入る。
「どうしたんだい? カナエ」
「お聞きしたいのですが…何故柱になることをお断りしたのでしょう?」
「……わたしはただ鬼を殺したいだけです。
人を守る事が大事なのは分かりますが、それより鬼を殺したい。
それだけで階級があがっただけなので……鬼殺隊を支えるという役目はわたしには負担が大きいし向いてません。
もっと柱に相応しい人達がいることを知ってますし」
「これでもかなり説得したんだけど…ね?」
「申し訳ありませんお館様……」
多分、かなり固い意思があるんだろう。
お館様の言葉でも頷くことはなかったんなら、しょうがねぇんだろう。
しかし生気も覇気もねぇのに喋るのはしっかり喋んだな。
「そういえば実弥と小芭内、義勇と同い年だったね。
小芭内、みんなと仲良くできるようによろしく」
「御意」
「あ、…よろしくお願いします」
それを最後の話で今日の柱合会議は終わりだった。
お館様が「お先に」と言って屋敷の中へと入っていき、姿が見えなくなったの同時に皆の姿勢も崩れる。
「とんでもねぇ派手なやつがいたもんだなぁ!」
「派手…? どちらかといえば地味な方では?」
「とっても可愛らしいわね〜…
屋敷は?うちにくる?」
「屋敷はありがたいことに空いてるところを使うようにと言われました」
「伊黒と知り合いのようだな…。皆と仲良くするといい…」
「はい、ありがとうございます」
胡蝶は一人離れたところにいる冨岡に、同い年なんだから挨拶くらい…と声をかけるとあいつは頭で必死に言うことを考えたのか沈黙の後「精々死なぬよう励め」と何食わぬ顔で言い放った。
言われた訳でもない俺が腹立つわ。
「……あ、…え?…ケンカ売られてるんでしょうか?」
「こいつの事は気にするな、目に入れるな、話を聞くな」
「ところで二人はどんなお知り合いなんでしょう?」
「あー…小さい頃から顔馴染みというか、」
伊黒の方をちらっと見て歯切れが悪くなる。
俺も伊黒の事は詳しく知らねぇが…お互い思い出したくもない過去があってそれを気遣って二人何も言わねぇんだろう。
雰囲気がそれを物語っていた。