第2章 弐.尊い命
「ちょっと待って冨岡さんなんで?なにそれどんな顔?」
「あ、すまん…」
「ほんと冨岡さん…」
「つい…」
が勝ったはずなのに、理不尽に薬湯をかぶりご立腹だ。
そりゃそうなるが…冨岡の顔といい、の怒ったような呆れたような、やるせない顔で二人薬湯でベチャベチャなまま喋っているのがおかしくて笑ってしまう。
そしての冨岡にかけた薬湯がはねて煉獄に少しかかったのもまた面白かった。
「はいはいこれ以上お二人でやるとケンカになりそうですね。
どうぞお顔を洗ってきてください」
「行ってきます」
「冨岡ァ、そもそもかけるんじゃねェよ」
「え、かけることが訓練の流れと」
「は胡蝶の継子に薬湯をかけず頬に当てていたぞ!
確かに両手を使ったり、自分がかけられたら負けだというのにかけ返したり、少々感心できない!」
「そうか…頬に優しく当ててやればいいのか」
「いやそれやったら気持ち悪がられて終わりだぞォ。
まず臭そうだから早く洗ってこいよ」
顔を流すために立ち上がり一旦退室する冨岡。
洞察力、反射、速さ。
どれをとっても冨岡と一進一退で譲らなかった。
確かにこのまま引退させるには惜しいが、今回の任務のように、いつ強い鬼と遭遇するか分からないのだ。
それを踏まえた上で復帰となるとやはり頷けない。
煉獄は呼吸を使えないほどかと思われたが、辛うじて呼吸は使えるまで回復していたが片目が見えなくなってしまっていた。
復帰は悩んでいるそうだ。
この二人は今日で蝶屋敷生活が終わる。
長かっただろうが、その分休めただろう。
明日は柱合会議がある。
その前に二人はお館様に事前に知らせるために、準備が整い次第、産屋敷へ向かうようだ。
「やっぱり上弦との戦いで何かあったのかァ?」
「うむ、幼い頃は鬼の元で育てられていると言っていたが、あの猗窩座という鬼と関わりがあるのかもしれん。
まるで猗窩座はのことを知っている口ぶりだった」
「だからと言って探す理由になるとは思えねェが」
「確かに、猗窩座が昔そういうことをしていたとは思えない。
どんな関わりがあるかは分からなかった」