第2章 弐.尊い命
「テメェ機能回復訓練と言いつつ楽しんでんだろォ」
「いい機会ではないか!」
「あぶね…」
「惜しかった!」
どっちも譲らない攻防戦を続ける最中、バシャッと音がして集中力が切れ音がした方向を見る。
冨岡がに薬湯をかけていた瞬間だった。
あ、あいつ殺そ。
「捕まえた!」
後ろからギューっと効果音がつきそうなほど抱きしめるように捉えてくる煉獄。
いやそこまですんなよォ。
「む、冨岡が勝ったか」
「ちょ…冨岡さん片手で言ったじゃん…」
「すまん、つい手が出てしまった」
「ずる…」
薬湯をくらい面食らった顔で冨岡を指さし抗議している。
煉獄に抱きつかれたままズルズルと引っ張り冨岡の方へ向かった。
「冨岡ァ…」
「これは冨岡さんが悪いですね」
「すまない…」
「なんだ、ずるでもしたのか冨岡!」
「片手でやると言ったのに、白熱してきてスキが見えたものだからつい手が出てしまった…」
「ちょっと実弥さんでも煉獄さんでもいいから冨岡さんの片手掴んでおいてくださいよ。
それでもう一回……え、なんでくっついてるんですか?可愛いですね」
「離れろォ煉獄」
「うむ、俺が冨岡の腕を抑えておいてやる!」
そう言って冨岡の横に座り腕を組むようにガッシリと掴む煉獄。
煉獄と冨岡が腕組んでるみてぇで見た目はまぁまぁ地獄絵図。
しかし不意打ちで両手を使われ対応できずに薬湯をかぶって頭に血がのぼったには関係なさそうだった。
「はじめ」
胡蝶の掛け声が掛かったのにも関わらず、お互い動かず相手を見つめている。
しかし両方スキはない。
確かに片手だと、先に手を出した方が不利になる。
片手で湯呑みを取ろうとして抑えられると、上にある手が先に動くから見誤ったり少しでも遅れるとそれでもう負けだ。
反射訓練が片手でやることにより、相手の動きを正確に見極める訓練にもつながってるな。
そしての方から勝負をしかける。
手が動き、湯呑みを取るその動作を少しずらし、冨岡の手が湯呑みをとるの手を止めようと動いたとき、はその隣の湯呑みに手を移動させ薬湯を冨岡にかけた。
ほんの一瞬の出来事だった。
そして咄嗟に冨岡が取った湯呑みを勢いでにそのままかけたのだった。