第2章 弐.尊い命
だから血眼になって、上弦の鬼まで使って探してやがんだ。
「禰豆子を鬼舞辻無惨に見つけさせるな、分かったな竈門ォ」
「え、はい…」
「でも猗窩座ってやつが見つけたって言ったとき、禰豆子ちゃんはいなかったよ」
「……まさかか?」
「分からないけど……何のために?」
キョトンとバカみてぇな顔で尋ねてくる我妻。
あいつ昔、鬼に捕らわれてたっつったが……そしたら伊黒もそうだしな。
を探している可能性は低い。
煉獄は炎の呼吸を継いできたというだけだからもっと有り得ねェ。
「竈門のことじゃねぇのか?」
「そうは見えなかったけどなぁ…」
「まァいい。お前らはしばらく休んでろォ」
あの二人の意識が戻ったら柱合会議をすると言っていた。
それまでに何か分かればいいが……。
とにかくあの二人はもう鬼殺隊に戻れる可能性は低い。
は片腕をなくしているし、煉獄は下手したら呼吸を使うことができなくなるかもしれない。
だから鬼に狙われることもねぇだろう。
二人のいる屋敷へ戻ると、胡蝶妹が笑顔で容態が安定してきたと報告してきた。
あとは目が覚めるのを待つだけか。
少し離れている二人のベッドの間に椅子を移動し、背もたれに背中を預け腕を組む。
胡蝶はそんな俺を見て、お布団でよければ出しましょうか?と気をつかってくれる。
「俺のことは気にすんなァ。
それより俺がここにいるからお前が休んでこい」
「何て返そうがそこから動く気はなさそうですね」
お言葉に甘えて…と言って退室する胡蝶妹。
煉獄がいればうるせェはずなのに、やたらと静かだ。
も俺がいればすぐ声掛けてくるくせに、寝てやがる。
あー、寝顔なんて見た事ないよなァ。
長い髪の毛、長いまつ毛、透き通る肌、小ぶりな鼻、血の気のねぇ唇。
……綺麗な顔してんな。
「辛かったよなァ」
髪の毛、頬……普段触れたことはないが手を伸ばす。
顔にも細かい傷がある。
傷だらけになって守ったやつらは元気だったぞ。
一般人も誰一人死んじゃいねェ。
煉獄もお前も、たった二人で大勢の命を救った凄いやつらだ。
起きたらみんなで飯食いに行こう……。
そう心で語りかけた。