第2章 弐.尊い命
近くの椅子に腰をかけ、息をするのも忘れるほど緊迫した雰囲気を見つめ無事を祈る。
こいつらはもう戦わなくていい。
その代わり俺がもっと強くならねぇと。
胡蝶姉妹と目まぐるしく動く蝶屋敷の女たち。
の治療をしていた胡蝶妹から一筋の涙が流れる。
「しのぶ」
「分かってます。でもこんなのあんまりじゃないですか…」
その涙を見て、俺まで泣けてきてしまう。
どうやら治療自体は一段落したようで、ただただ呆然と、そして心配そうに個室に並べられたベッドに横たわる二人を胡蝶姉妹は見つめていた。
「終わったのか…?」
「出来ることはしました。あとは二人の…生命力に任せるしかありません」
「助かったわけじゃねェのかよ…?」
「残念ですがこれ以上は何もしてあげられないの…。
でもきっと大丈夫よ」
今日一日は何があるか分からないと告げられる。
怖い。
また大事な人を失うかもしれない。
その恐怖から、つま先から指まで血の気が引いて震えたのだ。
「あ…お館様に任務の報告へ行かねぇと…。
それ終わったらまた来るわ…今日一日はここにいる」
「私が代わりにお伺いします」
「あまね様…どうしてここへ」
「状況の聞き取りの為にお伺いしました。
蟲柱様、よければ竈門炭治郎殿への聞き取りをお願いしたいのですが…」
「御意」
目の前に座りこちらをジッと見つめるあまね様。
特に大きな発見があった訳ではないのにわざわざこちらへ出向いてくれたことが恐縮だ。
任務で見つけた足跡と、その向かっている方向が煉獄や達の戦っていた現場へと繋がっていたことを報告する。
そして胡蝶も戦いの報告は抜きに、竈門炭治郎に聞いた話を要点だけ伝えはじめた。
「竈門炭治郎隊士の話ですと、下弦の壱を討伐後、上弦の参が出現し、煉獄杏寿郎及びが対峙。後に夜明けと共に逃げられてしまったとの事でした。
我妻善逸隊士は耳が優れているようで、上弦の参が現れた時には「みつけた」と呟いていた声が、不確かではあるが聞こえたそうです」
「……これで鬼舞辻無惨が十二鬼月を遣い、探している人物がいるのは確定しました。
それが竈門炭治郎殿、及び妹なのか、また別の人物なのかは定かではありませんが。
ご協力感謝します。ゆっくりお休みください」