第2章 弐.尊い命
ポツポツと繋がる足跡を見る限り、この方角を真っ直ぐにかなりの速さで向かっていたということが分かる。
木々を利用して飛び越えたりしているのだろう。
この先に何かあるのか……?
しかし既にもう夜明けだ。
このまま進んでいても鬼は出てくるどころか姿を隠すだろうから、これ以上の探索は無駄骨だ。
一応この先に何があるのかだけを確認して……
「カァー!コノ先進ンデ急ギ隠ノ応援セヨ!
煉獄杏寿郎率イル任務へ行ッタ隊士負傷!計五名!」
……!
負傷した隊士を蝶屋敷まで運ぶのに人手がたりないのか。
だから一番近くの俺が呼ばれた……。
クソ、なんで気づかなかった…!
負傷ってどの程度なんだ、とにかく急げ、走れ。
走って森を抜けた先には、大きな黒い列車が横たわっていて、その前にバタバタと隠が動き回っているのが見える。
なるほど、一般人もいるから怪我の確認もしなきゃいけねぇのか。
「!煉獄!」
「風柱様!どなたか一人でも蝶屋敷へお願い致します!」
「む、不死川」
「実弥さんなんでここに」
二人とも座ってはいるが重症のようだ。特に煉獄が。
口から血が出ているが……内臓までやられてんのか?
「いいから行くぞォ。重い方がおんぶの方いいな……煉獄、早く捕まれ。
で、は抱えていってやるから、オイてめぇ腕は」
「あ、腕…」
「不死川、すまない」
「クソ……とりあえず早く行くぞ。
急ぐからしっかり捕まっとけェ」
二人がこのザマとは……一体何がどうなってやがる。
どんな鬼が来たらこうなるんだ。
気にはなるが今はこいつらの救護が先だ。
「寝ててもいいが着いたらちゃんと目を覚ませよォ…」
「柱として不甲斐ない…」
「はぁ…血が足りないわ…」
煉獄の方は肺がやられているのか呼吸すらままならないようだ。
止血と呼吸でなんとかしているは、出血量が上回っているようで目が勝手に閉じていってる。
これはまずい、二人とも。
今出せる全速力で蝶屋敷へと着くと、鴉から既に連絡があったのかバタバタはしているが胡蝶姉妹が深刻な顔をして出迎えた。
二人を病室まで連れていき、ベッドへ横にする。
「二人とも息が……急ぎましょう、しのぶ」
「はい姉さん」