第1章 壱.一目見たその時から
「お待たせしました」
「あ?おう、行くかァ…」
「ふふ」
「え? …なんか邪魔しちゃった感じ?」
「何バカなこと言ってんだァ…ほら行くぞ」
じゃあカナエさん、また…と軽く手をあげ挨拶していたので、つられて俺も手をあげるだけで挨拶をすませる。
道中では、あーだこーだと煉獄への思いも挟み挟みに伝令への不満を漏らしていた。
俺としちゃァいくら煉獄とはいえ、その任務に同行するっていうことに文句を言いたいところだが、言っても聞かねーだろうし。
そもそも危ないところに行くななんて、今の立ち位置上むりがある話だ。
うんまぁ死なないで胡蝶姉のように引退することを望んでる訳だが…
それで鬼殺隊の戦力に穴があくのも困るわけだ。
難しい話だ。
産屋敷へ着くと外庭を散歩しているお館様とお嬢さん方がいらっしゃった。
他にもちらほら…甘露寺と伊黒と宇髄が見える。
基本任務のない時や昼の鬼の動かない時には、自分の屋敷で鍛錬をするか産屋敷にいるかのどちらかだ。
急に何かあった時にすぐ対応出来るようにという意味もある。
「お館様、お散歩されておりましたか」
「と実弥かい。今日はいい天気だね」
「あのお館様…、急な申し出で恐れ入りますが、煉獄さんの明日の任務の件…同行させていただきたいのです」
「あれは杏寿郎が一人で行くことを決めたんだ。
私は構わないから杏寿郎に聞いてみるといい」
「ありがとうございます」
「が行くなら大丈夫だね。
ほら、天気もいいからも実弥も皆と一緒に遊んでおいで」
「はい…失礼致します」
「お館様、お気をつけて」
なんだ、俺の出る幕はなかったな。
お館様が歩き始めたので、俺らも邪魔をしないように奴らのいる場所へと向かい、戯れているところに割って入っていった。
伊黒は甘露寺との二人の時間を宇髄に邪魔されていたようで、げんなりとしていた。
「こんなに柱固まっててもしゃーねェし、甘いもんでも食いに行くか」
「そうしますか」
バラバラの方が都合がいいが、実はそんなこと気にしたことは無かった。
伊黒も貴様らまで邪魔するのか…とでも言いたそうな顔だったもんだから、その場を離れることにしたのだ。