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八重歯と稀血

第1章 壱.一目見たその時から




遠くでバカみてェに騒いでいる声が聞こえる。


「一体全体どうなってんだァ?」


胡蝶が怒っているようだが、気にしねェ。
お館様が容認していたとしても許されねェ…!
鬼が人間を食わねぇなんて有り得ねぇんだよォ…

「鬼が鬼殺隊として人を守る…?
そんなこと、有り得ねぇんだよォ!」

「俺の妹を傷付けるやつは…柱だろうと許さないッ!!!」

「やめろ!もうすぐお館様がいらっしゃるぞ!」

「「…!!」」


その言葉に遅れをとったとはいえ、頭突きをくらい脳が揺れた。
クソ、動けねェ!

俺のそばに寄り、心配そうに見てくる。


「実弥さん…!」

「善良な鬼の区別もつかないのなら、柱なんてやめてしまえ…!」

「てめェ…ぶっ殺してやる」

「お館様のお成りです」


クソったれ……!
とにかく今はお館様へ挨拶をし、こいつの処分を決めてもらうべき議題へ持ちかける。

容認しているとか、切腹するだとか…そんなことはどうでもいい…。

今まで俺たちはどんな思いで鬼を殺してきたと思ってる…!

俺が俺自身の手で母親を殺した意味は…?
鬼に殺された匡近の無念は…?
幼少期から鬼に苦しめられたや伊黒の思いは…?

どんな思いでここまで登りつめてきたと……!


「証明してみせますよお館様。
この俺が、鬼の醜さを」

「不死川、鬼は日陰じゃないと出てこない」

「実弥さん、小芭内、やりすぎでは」

「お館様、失礼仕る」

「ちょ」


の制止も無視して鬼をひきずりだす。
俺は稀血なんだァ。食いつかねぇはずがねぇ。

その癖に、その鬼は顔を背け、俺を襲ってくることは無かった。

は……なんだこいつ…。


「これで、人を襲わない証明ができたね」


クソ野郎。
逆に俺が証明しちまってどうする……。


「実弥、小芭内、下の子にあまり意地悪しないように」

「御意」
「御意」

「これで炭治郎の話は終わり。下がっていいよ」


下がったかと思えば騒々しく戻ってきて、俺に頭突きしたいとかほざきやがった。
時透がそれを制止し、その場を抑え例の野郎と鬼は蝶屋敷へと行ったのだった。


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