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第13章 失いかけたもの


マユサイド 続き

「やるときはやって、休むときはしっかり休むっていうのが大事。俺が言いたいのはそういうこと」

「うん…わかった」

まともなことを、こうも面と向かって言われるとあっさりと納得せざるを得ない。

「じゃ今日は散歩とリハビリがてら、ゆっくり歩いてかえろ」

「!」

そういって立ち上がったかかしに手を差し出される。

いつもならかかしがさっさと抱きかかえて帰ってしまうのだが、物足りなく感じている私のことよくわかってくれてる。
ようやく私は笑って、かかしの大きな手を握りしめた。

少し皮膚がまだつっぱって歩きにくいこともあるけど、だいぶ体は運動することに対して慣れてきた。

かかしにつかまりながら、ゆっくりと家に向かって2人で歩く。
向かっていくほうには綺麗な夕焼けで、子供たちもそれぞれ家に向かって走り出す。

「かかし、私いま幸せだな…」

「ふふっ俺も今同じこと思った」

2人、夕焼け色に照らされながら見つめ合って笑う。
こんな日々にあふれたある一場面ですら、私達には幸せなのだ。
普通が何より幸せっていうことが、2人死を覚悟したあの日から更に強く感じるようになった。

かかしが傍にいて、わたしもかかしの傍にいる。
一緒に触れ合うことができる。
同じ道を歩いて、同じ家に向かって、同じ夕焼け色に染まることができる。

失いかけたその普通は、今何よりも大切なものだ。

このまま、こんな日々が永遠に続けばいいのにと本当に思ったんだよ。
隣でずっとずっとかかしの笑った顔みてたいって思ってた。

思ってたのに___



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