第13章 失いかけたもの
かかしサイド 続き
「それは…忍びとしてはもう…」
「できないとは言わないよ。
ただ忍びとして復帰するならば乗り越えなければならない壁は今後いくつもある。それこそ彼女の思いと精神力が大事になるんだ」
「そうですか…」
頭には
『かかしと、かかしが守りたいものを一緒に守らせてくれない?』
そういった彼女の言葉が蘇る。
彼女にもあの時火の意志が宿ったのだ。
「とにかくこっちとしても全力でマユの治療と回復につとめる。かかし、お前も辛いだろうがマユを支えてやってくれ」
「もちろんそのつもりです。
俺にとっては、生きててくれただけで十分ですから」
そういって笑う俺をみて、綱手様もようやく笑ってくれた。
「あぁ、私もそう思ってる。
じゃあ、少し体が動くようになったら会いにいってやりな。ほんとはしばらく面会謝絶だが、お前なら許可する」
「ありがとうございます。綱手様…」
「また来るよ」
そういって綱手様は、少し切なく笑って病室をあとにした。
俺とマユは、本来ならここにいなかったはずだ。
死んでいたはず___
それがこうして木の葉に帰ることができて、また共に生きることができる。
彼女が忍びとして戦えなくても、俺が彼女をそばで守る事ができるのだ。
十分じゃないか。
仮に、彼女が忍びに戻りたいというならば、俺はどんなことがあっても彼女を支えるつもりだ。
早く、顔が見たい。
抱きしめたい。
彼女が生きていることをこの身に実感したい______
そう思ったのもつかの間、疲れ果てた体の疲労に負け、俺は死んだように深く眠ってしまった。