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第13章 失いかけたもの


マユサイド

体が思うように動かない。
あぁそうだ、私全身にやけどしてたっけ…

重いまぶたを持ち上げると、そこは見慣れた天井。
病院か…

少し首を持ち上げて体をみると、まぁ見事に全身といっていいほど包帯に巻かれていた。
死んでもおかしくなかったもんね…
と苦笑いがもれる。


コンコンと音が聞こえ、ドアが開くと松葉杖をついたかかしが入ってきた。

「起きてたんだ?」

「うん、さっき目が覚めたとこ…」

私の傍に来て松葉づえを壁に立てかけると、そのまま立ちつくすかかしを不思議に思う。

「ね、来て早々なんだけど、キスさせて」

返事もする間もなく、いや、たとえ拒否しようとしても動けない私に、かかしは私の顔を両手で挟んで静かに唇を合わせた。

いつもとは違う、ただ軽く唇を合わせるだけ。

少し離れて私をまた見つめたあと、もう一度キスしてくれるかかし。
また、離れて、またキスを落とす。
離れる度に見えるかかしの顔は、まったく余裕がなくて。

違う…
理性の問題ではなくて、彼の瞳はユラユラと揺れていて…

あぁ、あなたはこうして私が本当に生きていることを今、確認してくれているんだ。
私もあなたもほんとは死ぬはずだったんだから__

門の前で、最後に別れのキスをしたことが蘇る。
もう二度と触れることができないと思ったあの時。
そうか、今こうして何度も何度も触れることで、あの時の記憶や恐怖心を、かかしの中で上書きしているのだとわかった。


「かかし、私達…生きてるね。また一緒に、いれるね」

そういう私のほうが先に涙をこぼしてしまっていた。
私の涙を指先でぬぐいながら、眉を下げて笑うかかしは

「愛してる」

っていってくれたんだ。
もう、十分だよ___
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