第12章 それぞれの思いと戦い
かかしサイド 続き
「かかし」
そう呼ばれて俺は姿を現した。
「ヒルコ…」
「こいつを手に入れたから、君にはもう用はなかったんだけどねぇ。それでも来てくれてうれしいよ。それほど俺の一部になりたかったのかな?」
「俺でもよかったはずだ。なぜ彼女にこだわる」
ヒルコは笑った。
「そりゃあ、彼女のほうが君より血筋がしっかりしているからね。鬼芽羅の術の完成にはもってこいだと思ったわけだよ。でもかかし、ほんとは君、何しに来たわけ?」
「できることなら彼女を死なせたくない。そのために俺が代わりになってもいい」
ヒルコは、哀れんだ目をして俺を見下ろした。
「僕はこれから鬼芽羅の術を完成して忍び世界を征服するんだよ?弱い奴なんかに選ぶ権利なんてない。
そうだろかかし…」
そういった途端に己の体を力強い圧力がのしかかる。
地面がきしむほど押さえつけられたあと、俺の体は宙を舞い、更に壁に投げ飛ばされた。
「グっ‥‥」
体のあちこちがきしむ。
俺の四肢にはすでに銅遁による術で拘束されていた。
さすがすでに4人もの血継限界のもの達を取り込んでいるだけのことはある。
やはりマユだけを救うことは無理か…
そうなれば金環日食が始まりマユの時限式の術が始まったタイミングで、それごとすべて、己も含め吸収するしかない。
「かかし。お前はその特等席でみているがいい。俺が術を完成させ完全体となるのを!」
マユの体からオーラのようなものが現れ、ヒルコの体に取り巻いた。ヒルコは歓喜した。
これを吸収できれば完全体となれるのだから。
と、その時________
マユの姿が瞬時に銀色の蜘蛛に変わりヒルコに飛びかかった。そして己も含めてヒルコのすべてを銀色の繭で覆いつくす。
マユの最後の抵抗である時限式の術の発動だと悟った。
君がこうして命を懸けてくれたことで、俺もこうして君と同じ場所で、この命尽きるまで君とともに戦うことができる…
全身のチャクラを燃やすようにして高め俺は術を放った。
すべてを飲み込み、無に帰す_________
「神威!!」
放った術の中で、繭の中の蜘蛛がこっちを見ているような気がした。
最後の強力な神威の発動により俺の意識は途絶えた___