第8章 金色の太陽の子と私
かかしサイド続き
こんなこと思ってくれてたなんて…
本心を言えば、危険なところにわざわざいってほしくない。かといって、力があるにも関わらずただ見ている、待っているしかできないという歯がゆい気持ちもわからないでもない。なにより、彼女がそうしたいと思っているということが重要なのだ。
「…そこまで言われたら、俺も…反対できないよね」
困ったように笑う俺に、彼女も同様に切なく笑った。
彼女も俺と同様、死と隣り合わせの生活に戻るのだ。
複雑すぎる…
だが、自分の手で守りたいという気持ちもわかるのだ。
俺がそうであるように。
「かかし。渡したいものがあるんだ」
「え、何?」
そういうとマユは右手を俺の胸の真ん中にかざして、静かに何か唱えだした。
「糸遁・手交術・繭糸防壁・連弾衝…(しとん・しゅこうじゅつ・けんしぼうへき・れんだんしょう)」
小声だったから俺にはよく聞こえなかったけど、なんとなく暖かいものを感じた。
それ以外はなにもない。
「ん?何したの?」
「ふふ。万が一の時、かかしを守ってあげられるおまじない」
ふむ…なんだかわからないけど、彼女の一部が俺に入ってきた気がした。
「そっか…ありがと。俺のこの眼にも誓わせてくれる?」
そう言って俺は閉じていた左目を開け、自身の右目と写輪眼で彼女を見つめた。
オビトが託してくれたこの目に俺は仲間を守ることを誓っている。
オビト、俺には心を許せる大切な人がまたできたよ。
この人も何があろうと守り抜く。
「相変わらず綺麗な眼…」
俺の左目をそっと触るマユの手をぎゅっと握りしめ、俺はこの眼に誓った。
「明日、火影様に伝えにいこっか」
「うん」
そうして、俺たちは一緒に眠りについた。