第7章 共に生きるとは
かかしサイド 続き
玄関を勢いよくあけると同時に、マユが勢いよく飛び込んできた。
「ぅわっ!」
と不覚にも倒れかけた。そこには
「よかったぁぁーーー!!!」
と安堵する彼女が泣きそうな顔で俺を見上げていた。
こりゃかなり心配させてたな~…と申し訳なく思う。
今日と、明日は休みだから、しっかり甘えさせてあげないと。
落ち着いたマユにコーヒーを入れて一緒にくつろぐ。
そうとう不安だったんだろう。
俺の隣にぴったりとくっついたままだ。
「ごめんね、最初の任務は予定どおり終わったんだけど、追加任務でそのままかり出されてたから帰るの遅くなって」
「‥‥」
「マユ?」
「…」
「怒ってるの?」
「…違う…かかし…私、忍びやめてよかったのかな…」
思いがけない言葉に俺はかたまってしまった。
「忍びが死と隣り合わせなの…わかってるんだよ。
でもただ待つだけってこんなにも不安なもんなんだね。
かかしは名の知れた忍びだってことは前から私も知ってるけど、何かあったときに自分がただ家で待ってるだけって…どうなんだろうって思ってさ」
そっか…マユは忍びだったからこそ、忍びのこともわかるし、今こうして一般人として生活をしているがために、一般人として忍びの俺といる気持ちもわかってしまうのだ。
なんとも複雑な思いに駆られた。
任務に予定外とはつきもので、それが上忍レベルの任務になればよくある話だ。
遅れて帰ったのは、何も今回が初めてではない。
「もしかして、今までもずっと考えてた…?」
「うん…大丈夫だって思っても、やっぱり姿を見て触れるまでは不安はぬぐえないもんだね…」
「そっか…そうだよね…」
俺は任務を遂行し、マユのもとに必ず帰ると誓っているが、それは言ってしまえば自分自身の誓い。
絶対、必ず…とは、忍びの世界においては決して100%ではない。
「大丈夫だよ、俺は必ず帰ってくるから。
これでも一応名の知れた忍びになってるわけで、そう簡単にはやられやしないよ。約束する」
約束なんて、あってないようなものだ。
でも結局彼女を安心させるためにはこう言うほかない。
複雑な思いを噛みしめながらも俺はマユを抱き寄せてもう一度言った。
「大丈夫だから…ね?」
俺の胸の中で彼女は静かに頷いた。