第1章 出会い
かかしサイド
単独任務の帰り、なんとなく降り立った川の先に誰か浮いている。
おいおい、嘘でしょ…
と思い、急いで近寄って引き上げた。
引き上げたのは女の人。
俺と同じ銀髪の髪の毛、真っ白な肌、水が滴ってなんとも言えない妖艶な姿となっていた。
本人曰く、溺れていたのではなく、泳いでいたと…。
どういった趣味かウソなのか…それにところどころにケガをしている。
一番気になったのは、彼女からわずかに漂う何人かの血の臭い。こんな人にいったい何があったのか。
何やら興味のほうが先行して、俺は強引に彼女を抱え家に送った。
本来ならここでさよならといったとこだが、やはり気になる。
結局彼女はすぐにお風呂に行ってしまったが、ケガもしてたし、手当もたいへんだろう…と自分に言い訳するようにして、本を読みながら待った。
お風呂上がりの彼女は顔色が少しよくなっていた。
白い肌にはいくつも傷があり、手当をほどこしていく。
あまり目を合わせてこないし、人と関わりたくないのだろうか。
こっちとしても、気になる事はあるが聞いても答えが返ってくる気がしなくて何も聞かなかった。
結局そのまま別れてしまったが…うーん‥気になる。
だが、本来の任務は終わって里に帰って報告したいこともあるし、と道を急いだ。
しばらくまた森を進むと、血の臭いが鼻をつく。
警戒しつつ近寄っていくと10人ほどの忍びが息絶え無惨に横たわっていた。
そこに、かすかに彼女の臭いも残っていたのだ。
「まさか…ね…」
あんな細腕にいったい何ができるんだと疑ったが、この忍びの世界には俺よりも若く小さく、俺よりも強い奴はいくらでもいる。
彼女も俺と同じ世界に生きるものなのか…
複雑な思いを抱えながら、そこを後にした。