第6章 欲しかったもの
かかしに言われた言葉が本当にうれしかった。
これからは誰かに頼ってもいいのだ。
「あの…新しい場所用意してもらってこんなこというのもなんだけど、たまに寂しくて…
かかしも任務に行かなきゃならないから、わがままなんて言えないんだけど、私の家も…かかしがいつでも帰ってこれる場所として思ってくれていいから」
かかしに対する自分の気持ちはもうとっくに気づいていた。火影様からの命令であったにしても、一人だった私に、いろんなものを与えてくれた。
けどはっきり口に出すのは恥ずかしくて。
こんな遠まわしのような言い方しかできなかった。
でも私の気持ちが彼に届くよりも、忍びとして生きるかかしにはちゃんと無事に帰ってきてほしい。
でも____本心はやっぱりかかしの特別になりたい。
今更ながら欲が出てきた。
どうしよ…
かかしの顔が見れない…
沈黙にソワソワしていると
「ん~‥‥それって、マユは俺と同じ気持ちってことで…いいのかな?」
そう言われて顔を向けると、かかしは照れ臭そうに眼をそらしていた。
「そ、そうなの?…かな?かかしもそう‥なの?」
あれ、あんな言い方だったけど私の気持ち伝わったのかな…自信もないまま問いただす。
すると、私だけにみえるように向きを変えたかかしが、一呼吸ふぅっと吐き出す。
「あのね、俺はけっこうマユのこと好きかも。言うの遅くなっちゃったけどね」
と、マスクをずらしながら素顔をあらわにして言った。
はっと息を飲んだ私の前にフワッと優しい風が吹く。
と同時に、かかしの暖かい体温が唇に重なった。
一度離れたのち、もう一度角度を変えて今度は深く重なる。それはとっても優しくて、心地よくて、甘い。
離れたかかしの顔は、いつもよりちょっと余裕のなさそうな顔。
「…マスクの下、それ…反則だよ…」
なんとか言い返すと、かかしは悪戯そうに笑う。
「その顔、俺だけだからね見せていいのは」
ポヤンとした意識の中、そう言われて無言で頷くと、いい子って言われてもう一度してくれた。
私は木の葉にきて、帰る場所も、仲間も、恋人も、ほしかったものすべて手にすることができた。