第9章 おはようのキス
「ロロ起きて」
「ん。。。」
優しい聴き慣れた声が耳元でする。
もうちょっと眠りたい、とモゾモゾと毛布を引き上げようとすると、
「起きないなら、食べちゃうよ?」
唐突に唇に温かいものが当たった。
そして、ぬるり、と濡れた舌が中に入ってきたような気がして、、
「んっ!?」
さすがに目の覚めた私の目の前にいたのは、執事としてこの城で働いているリオだった。
「リオ!??!」
飛び起きて思わず距離を取る。
「あ、起きちゃった」
「リオちょっと、、、!?」
キスしたの?!と聞くのも恥ずかしい。
「あぁうん。なかなか起きない時いつもしてたけど、気づいてなかった?」
リオは整った綺麗な顔に笑顔を浮かべながら言ってくる。
「いつも!?」
何回ぐらいしてたのか、そんなの全然気づいてなかった。
「ふふ、冗談。」
リオは笑いながら手をひらひらと振る。
「さすがに眠っている女の子にそんなことしないよ?それともそうやって起こされる方が好みだったりする?」
キスされたような気がしたのは、気のせいだったのかな。。
寝起きで混乱してたのかもしれない、私は頭を振ると立ち上がった。
「もうリオ、起こしてくれたのはありがたいけど、顔近すぎ。びっくりさせないでよ」
「無防備に寝過ぎなロロがダメなんだよ」
「あのねぇ」
「今日は会議の日でしょ?」
「あっ本当だ!リオありがとう!着替えるから出て!」
「手伝ってあげようか?」
「大丈夫だから!!」
リオにキスされたかもと勘違いしてしまった早とちりが恥ずかしくて、半ば強引にリオを部屋の外へ追い出し、ドアを閉める。
唇に手を当てると、温かな感触が残っているような気がして、ドキドキしてしまう。気のせいのはずだけど、なんだかもやもやする。いや、それより、今日の会議のことを考えなくては。私は頭をブンブンと振ると着替えの洋服に腕を通した。
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扉の外では、リオが真剣な面持ちでふぅと息を吐いていた。
「俺のものでいてくれたら良かったのに。。」
唇にそっと指をあてながら、呟いた言葉は誰にも聞かれず消えていった。