第11章 理由
無理やり舌も差し入れ口内をかき混ぜると、サクの体から次第に力が抜けていく。
オレは握っていたサクの手を離し、その手を頬に持っていき形を確かめるように撫でる。
そっと唇を離すと、2人の間に引いた糸が月明かりに照らされて光った。
サクは、息を乱し、眉根を寄せてオレを睨みつける。
でもその目は潤んでいて、それさえもオレを煽り立てる。
「サク……」
愛しいその名を読んで、サクの頬から首筋、肩口、腕、脇腹へと撫でるように触れると、サクがギュッと目を閉じて、ピクリ、と身を震わせる。
「先輩……、ダメ」
力なく自分の胸を押すサクを抱き寄せて、自分の手を追うように唇を頬から首筋へと滑らせると、サクが肌を泡立て、「んっ……」と微かに可愛い声を漏らす。
あー、やばい。
止まれないかも……
そう思ったとき、ぐうう……とサクのお腹が豪快に鳴り、さっきまでの濃密な空気が一気に霧散する。
サクが手を咄嗟に腹に当てて、違う意味で顔を真っ赤に染める。
「ふ、ふふ……」
オレがサクの肩口に顔を埋めたまま、震えながら堪えきれなくなった笑いを漏らすと、サクが両手で顔を覆って体を丸める。
「なんで今鳴るのー!!」
オレは今度こそ堪えきれなくなって、思い切り笑い出してしまう。
「もう!そんな笑わないでください!
任務の後何も食べてないから、お腹空いてたんです!」
ポカっとサクがオレの胸を叩く。
「ふ、ふふ。ごめ。
だって、空気、全部ぶっ壊すから。
ふふ、あー、おもしろ……」
笑いすぎて涙まででてくる。
その涙を拭って、サクの上から起き上がり、真っ赤な顔のサクも、手を取って起こしてやる。
「はー、笑った。
晩めし、そーいやオレもまだだった。
一緒に食いに行くか」
プリプリ怒っていたサクが、コロリと嬉しそうな表情になり「はい!」と頷く。
この表情がコロコロ変わるとこも、好きだなと思う。