第11章 理由
事が動いたのは5日後。
任務が終わって、晩ご飯はお弁当は買って帰ろうといつものお弁当屋に向かっていると、ひと気のない道で「このブス!早く別れろ!!」と言う声と共に盛大に足を引っ掛けられる。
体がグラリと前に傾き、手をついて一回転して着地する。
!この匂い!!
イタズラされたロッカーや、家の前に残っていた微かな甘い匂いと一緒だ!!
わたしはその匂いの主、走って逃げようとする女の手を捕まえた。
「ちょっと待ってください!!
言いたい事があるなら、面と向かって言ってください!!」
「離しなさいよ!!」
捕まえた女がこちらを振り向く。
豊満な体。
色っぽい長い黒髪に、赤い唇。
この人、前にカカシ先輩にひっついてた人だ……、
女はわたしから逃れようと腕を思い切り振り上げる。
その拍子に伸びた爪がわたしの頬を傷つけ、一筋の血が流れた。
「カカシはアンタなんかと全然釣り合わないんだから!!
カカシも何が良くて、こんな女と付き合ってんの!?」
女はわたしを馬鹿にするように見下ろしてくる。
「っ、……あなたには関係ないです。」
痛いところを突かれて思わず目を逸らす。
「あるわよ!
だってわたし、カカシに抱かれたことあるもの!!」
「え……?」
口角を上げ笑う女を、茫然と見つめる。
「あ、もしかしてあなたはまだ、抱かれてないの?」
ニヤリと笑った女が、これ見よがしにわたしの体を上から下まで値踏みするように見る。
「まぁ、こんなチンチクリンじゃ、カカシも反応しないわよね」
クスクスと笑われて、頭の中で何かが弾ける音がする。
女に殴りかかろうとした瞬間、後ろに思い切り引っ張られる。
「ちょ、サク!
何してんの!?
相手は一般人だから!!」
この声は、カカシ先輩!
声を聞いた瞬間、悲しくて悔しくて目頭が熱くなる。
「……っっ、先輩の、先輩の節操なし!!!!!」
後ろに引っ張られ、崩れかかった体を回転させ、振り向き様にカカシ先輩の頬を思い切り殴る。
ガッと痛そうな音と、確かな手応えを拳に感じる。
わたしはこの場にいたくなくて、暗い夜道をそのまま駆け出した。
「ちょっ!サク!!」
先輩がわたしを呼ぶ声が遠くに聞こえたけど、わたしはスピードを緩めることなく走り続けた。