第9章 2度目のファーストキス
その後も、先輩の言葉や仕草に翻弄されながらしばらく行くと、さっきの公園が見えてきた。
何気なく見たその先に一つの影があった。
暗がりではっきりとは見えないけど、あれは、ゲンだ。
まだ、ここにいたんだ。
急にキスしようとしたのは許せないけど、ゲンは真っ直ぐに思いを伝えてくれた。
なのにわたしは返事もできていない。
このままうやむやにして、ゲンと気まずくなるのは嫌だ。
思いは返せないけどちゃんと返事をしなきゃ。
「あの、先輩」
「ゲンとこ、行くの?」
先輩には、わたしの考えていることなんてお見通しだった。
「……はい。
ゲンは大事な仲間だから、ちゃんとしたいんです。
話してきてもいいですか?」
しばらく灰色の目でジッと見つめられ、そしておもむろに抱きしめられる。
「やだ……。サクのことが好きな男のとこなんか、行かないで」
甘えるみたいに首筋に顔を埋められる。
「付き合えないってちゃんと言いたいだけですから。
それに、さっきみたいに絶対に、隙とか見せませんっ……!」
必死で言葉を紡いでいると、いきなりチュ、と頬に口付けられる。
「ウソだよ」
「え?」
先輩はそっと抱きしめていた腕を緩めると、わたしを送り出してくれた。
「ここで待ってる。」
「はい。超特急で行ってきます!」
うん、と頷く先輩を残して、わたしはゲンのいる方へ急いで駆けた。