第9章 2度目のファーストキス
2人、暗い夜道を歩く。
わたしの左手は先輩の右手に繋がれている。
先輩の少し後ろを歩いて、その絡まった指先を見つめる。
当たり前のことだが先輩の手は男の人の手で、大きくて、少しカサついていて、わたしの手を優しく、でもしっかりと包んでいる。
そろそろ帰ろうと歩き出したときに当然のように繋がれた手。
わたしはいわゆる恋人繋ぎをしたのは初めてで、しかもその相手は大好きな先輩で、嬉しくて、胸がギュウっとなる。
「サク?」
ふいに先輩がわたしの名を呼ぶ。
「はい」
「後ろじゃなくて、隣、来てよ」
そう言うと、ぐっと繋いでいた方の手を引かれ、わたしの体は先輩の真横にピタリと引っ付く位置にくる。
先輩は満足そうにわたしを見つめる。
先輩の温もりを左腕に感じてドキドキしてしまう。
「なんか、照れるね……。
今までフツーに先輩、後輩だったから」
「え!?先輩も照れてるんですか??」
わたしは、自分ばっかり照れてドキドキしてるのかと思ってたから、先輩の意外な言葉に驚く。
「いや、照れてるよ。かなり……」
さっき手を繋いだときも自然だったし、先輩は平然としてるんだと思ってた。
ちょっとでもドキドキしてくれてたなら嬉しいな……
「先輩はモテるから、こういうのも慣れてるのかと思ってました……」
「別にモテないし。
てか、今まで誰のこともこんなに好きって思ったことない。
オレをこんなにしたの、お前が初めてだよ。
だから、覚悟しといて……」
普段の飄々とした先輩からは想像できない甘いセリフと色っぽい顔に、一気に顔に熱が集まる。
「……っ。初心者なんで、お手柔らかに……」
やっとそれだけ言うと、わたしは先輩から目を逸らす。
「サク、首まで真っ赤……」
言われてバッと空いている方の手で首を隠す。
「恥ずかしいからあまり見ないでください!!」
「やだ。
可愛いから」
恋人になった先輩がこんなに甘いなんて知らなかった……!!
ドキドキしすぎてもう心臓が壊れてしまいそうだ。
そんなわたしを見て先輩がおかしそうに笑った。