第9章 2度目のファーストキス
浮遊感がなくなり目を開けると、そこはどこかの建物の屋上だった。
「先輩……?」
先輩に後ろから包み込むように抱きしめられて、服越しに感じる先輩の温もりに、わたしは鼓動が早くなるのを感じた。
「サク、このまま聞いて……」
低く、柔らかい先輩の声が頭上に響く。
わたしを抱きしめる手に力を込め体を密着させるように抱き寄せると、先輩はゆっくりと言葉を紡いだ。
「サクが好きだ。
だから、ホントにオレのになって……」
「え!?」
思わず先輩の手の中でくるりと先輩の方を向くと、顔を赤く染めた先輩がいて、初めて見た先輩の照れた顔をわたしは見つめた。
「……後ろ向いたまま聞いてって、言ったでしょ……」
先輩は腕を緩め、手の甲で口元を隠してわたしから目を逸らした。
ホントに……?
先輩が、わたしを好き?
なんとか諦めようてして蓋をしていた、先輩を好きと言う気持ちが一気に溢れ出す。
目頭が熱くなり、涙を見られないように目を伏せる。
「先輩、ズルいよ……。
わたしが告白しようとしたときは、誤魔化したくせに……」
「ゴメン……。
サクの気持ちは気づいてたけど、ずっと、自分の気持ち認めんのが怖かった……」
その言葉で、紅さんが言っていたことを思い出す。
『カカシは大切な人を作るのを怖がっている気がする。
また失うんじゃないかって思ってるのかもね……』
カカシ先輩の辛い過去……
わたしは思わずカカシ先輩に抱きついた。
「わたしは、カカシ先輩の傍から、絶対いなくならないです!」
常に死と隣り合わせの忍が死なない保証は、どこにもない。
この約束が正しいのかもわからない。
でも、今先輩にこれを言いたかった。
わたしはこの約束を違えないように、ただ必死で生きるだけだ。
びっくりしたように固まった先輩から、ふっと力が抜ける。
そして、大事なものを扱うようにそっと抱きしめ返してくれた。
「……うん」
わたしは先輩の胸に預けていた頭を上げて、先輩を見る。
「先輩……」
わたしもちゃんと伝えたい。
「わたしも、先輩が好きです。
大好きです」
やっと言えた……
額当てに隠されて一つしか見えない目を細め、先輩がわたしの大好きな笑顔で笑った。