第7章 傍にいたい
しばらく行くと、ちょうど向こうから、サクの同期のハナが看護師と一緒に廊下を歩いてきた。
「サクが目を覚ましたんだけど…。」
「はい!すぐ行きます!」
一緒にいた看護師に処置のために持っていたワゴンを託し、オレのあとについてくる。
サクの部屋のドアを開けると、サクは布団の中にうもれるように丸まっていた。
「…アンタ、なんで芋虫になってんの…。」
ハナは呆れた声を上げ、布団を勢いよくめくる。
「やめてっ!!恥ずかしくてカカシ先輩に合わす顔ないの〜!!」
ガバッともう一度布団の中にもぐろうとするサクの頬を掴み、呆れ顔のまま、ハナがサクの口に体温計をブスッと刺す。
「んんっ!!」
涙目のサクが何か訴えるが、お構いなしに唇を指で閉じさせると、しばらくして体温計を抜き、カルテに何事か記入していく。
「もう超絶元気みたいなんで、連れて帰ってくださって大丈夫です。
今日は患者が多いので、わたしはこれで。
サク、カカシ先輩が運んでくれて、ずっとついてくれてたんだから、ちゃんとお礼言うのよ!」
先輩に笑顔で会釈すると、ハナはとっとと部屋を出て行ってしまった。
とりあえず、さっきは寝ぼけてボーッとしていただけで、いつも通りのサクにホッとする。
サクはベッドの上に座り込み、また布団で顔を隠し、チラ、とオレを見上げた。
「あの…、先輩。
助けていただいて、ありがとうございました…。」
「うん。
駿河の持ってた情報は、オレが回収したから大丈夫だよ。」
サクがビックリしたように目を見開く。
「…っ、何もできず、しかも媚薬まで打たれて…。
迷惑かけて、ほんとすみませんでした…。」
シュンとうなだれて小さくなった肩。
その目には涙が滲んでいる。
「ま、向き不向きもあるし、サクは初めてだったから、仕方ないんじゃない?
次、うまくやりなよ。」
こういう任務は、できればもうやめてほしいけど…。
心の中でひとりごちて、オレは慰めるようにサクの頭をポンと撫でた。