第7章 傍にいたい
恋人は作らない。
いつからか自分の中にできていたルール。
性欲を満たすのは、一夜限りの刹那的なもの。
愛だの、恋だのとは、程遠い関係ばかりだった。
そんなとき暗部に配属になったサクが、他人を拒否していたオレの心の中に、無理やりでもなく、ごく自然に入ってきた。
最初は、やたら元気で、ただうるさい奴だと思っていた。
でも、一緒に任務をこなすうちに、それだけではないことを知る。
仲間思いで、いつも平和を誰より願っている。
時には敵にまで想いを馳せて、涙を流す。
それでも任務を完遂する強さもあって。
なにより、いつでも笑顔を絶やさない。
気づくと、その笑顔をいつも目で追っていた。
オレを見つけて駆けてくる人なつこい笑顔が、頭にこびりついて、離れかった。
誰にも触れさせたくなかった。
駿河がサクに触れるたび、殺気を殺すのに必死だった…。
心を殺すのには慣れていたはずなのに、サクを目の前にすると、それが上手くできなくなる。
重症だな…。
はぁ、と小さくため息をついたそのとき、サクの睫毛が震え、ゆっくりと目が開く。
「カカシ…先輩…?」
サクはオレの方を見て、小さな掠れた声で呟いた。
「目、覚めた?
気分どう?」
緑色の目を瞬いて、サクが答える。
「大丈夫、です…。」
薬のせいか、まだしっかり覚醒していなくて、目がどことなく虚だ。
「そ。先生呼んでくるから、待ってろ。」
「はい。」
小さく頷くサクを置いて部屋を出ると、オレはもう一度小さく息を吐く。
気づけば、またサクのことばかり考えてしまっていた。
しっかりしろ、と頬を両手で叩き、先生を呼びに薄暗い廊下を進んだ。