第7章 傍にいたい
サクの目はこれでもかと言うほど潤み、頬は紅潮している。
少し開いた唇からは、苦しそうな熱い息が漏れる。
はだけた着物と、露わになった太もも。
オレを見上げるその顔は、なんとも煽情的で……
オレは思わず目を逸らす。
「体、熱い……」
震える手で上半身をなんとか起こしたサクに、自分が着ていた外套を体を隠すように巻いてやると、オレはサクを抱き上げた。
「っ……」
肩や、足に触れる刺激だけでも大袈裟にサクの体が跳ねる。
「すぐ病院に連れてってやるから、ちょっとの間我慢しろ」
コクリと素直にうなずいたサクがギュッと目を瞑る。
これは明らかに媚薬を飲んだ時の反応だった。
黒い怒りが腹の底から湧いてくるのをなんとか堪え、今はサクを楽にしてやることが先決だと病院へ急ぐ。
「カ、カシ先輩……」
苦しそうにサクが小さな声をあげる。
木々な間を跳びながら目線をサクにむけると、潤んだ瞳がこちらを見上げている。
「わたしは……バカな後輩でも、犬でも、なんでもいいから、先輩のそばにいたい、です……」
きゅっとオレの服を掴み、サクが必死に訴える。
瞬きしたその目から、大粒の涙が一筋こぼれた。
「わかったから、もう黙ってろ」
ぎゅっと抱いていた手に力を込め、木の葉の里へとオレは足を早めた。
3代目に報告を済ませ病院に戻ると、サクは静かに眠っていた。
治療により症状は落ち着いたようだ。
ホッと息を吐き、付けっ放しだったサクのかつらを取り、汗だくの頭をタオルでそっと拭う。
近くにあった丸椅子に腰掛けると、さっきのサクの言葉を思い出した。
そばにいたい。
そう言われたとき、すごく嬉しかった。
波の国での任務以来、サクと2人きりになるのをなるべく避けていた。
サクが言おうとした、告白の言葉の続きを聞きたくなかったから。
サクとこれ以上近づくことが怖かった。
最悪だな、オレは…。
恋人にはなれないが、手放せない。
向き合わずに、ただ、サクを傷つけた。