第1章 雨宿り
右に左にふねを漕いでいたサクが、右に大きく傾く。
岩に頭をぶつける前に慌てて抱きとめると、その拍子に毛布がはだけ、下着だけしかつけていないサクの体が露わになる。
大きくはないが、柔らかそうな胸の谷間が、炎の光を受けてその陰影を濃く写す。
「!!」
慌てて毛布でサクの体を包み直すと、頭の下にカバンを敷いてそっと寝かせる。
「…無防備にも、程があんでしょ…。
忍のクセに…。」
はぁ…。とため息をつき、横に腰を下ろし、その顔を見下ろす。
男の子みたいに短く切られた淡い金色の髪と、おそろいの色の長い睫毛。
小さな顔。
どこか少年のような中性的な顔に、その髪型はよく似合っていた。
でも、その髪型のせいか、活発な性格のせいか、女として意識したこともなかった。
だから今、余計にドキドキしてしまう。
年頃の妹の裸を見てしまった兄の気分は、きっとこんな感じだろうか。
よく見たら整った顔をしているし、美人とは言わないが、可愛い部類に入るんだろう。
濡れて頬に張り付いていた毛をそっとどけてやると、「ん…。」と寝返りをうち、またはだけそうになった毛布を慌ててかけなおす。
穴の入り口に目をやると、外はまだザーザーと激しく雨が降っている。
早くあがってくれ…。
今日何度目かのため息をこぼし、心からそう願った。