第5章 看病のキス
「サク、熱が高いから解熱薬飲め。
飲めるか?」
「……せん、ぱい?」
熱い息でサクが呟く。
「水持ってきてやるから待ってろ」
水を持って戻ると、サクがまた目を閉じてぐったりしていた。
背中に腕を回し少し起こすと、薬を口に放り込み水のグラスを唇に当てて少しずつ流し込むが、意識が朦朧としているせいかうまく飲み込めない。
少し逡巡してから口布をずらし、自分の口に水を含み、喉の奥に流し込むようにサクに口移しで水を飲ませる。
コクリ…
サクの喉が上下して薬を飲み込んだのを確認しホッと息をつく。
サクをゆっくりベッドに寝かせて、布団をしっかり肩までかけてやる。
……顔が、熱い。
サクの柔らかな、少しカサついた唇の感触をなぞるように自分の唇に触れる。
バッと立ち上がりコップを洗うためにキッチンに行く。
さっきのは看病だから!!
よこしまな感情を払うように水を汲み一気に飲み干すと、2人分のコップをゆすぎ、冷めてきた頭でベッドへと戻る。
サクは、はぁ、はぁと荒い息を吐きながら眠っている。
もう自分にできることはないが、何となく1人にするのが心配で、小さな明かりをつけ明日の指令書に目を通す。
しばらくしてサクの顔を覗き込むと、先ほどよりも呼吸が楽そうだ。
おでこに手をあてると熱が少し下がっている。
薬が効いてきたな。
よかった。
ホッと息を吐き立ち上がろうとすると、ツンっとそでを引っ張られる。
振り向くとサクがオレの袖を掴んでいた。
「目、覚めたのか?」
サクは何か言っているが、小さくて聞きとれない。
しゃがんで耳を寄せると、「行かな…で…。」と眉間にシワを寄せて呟いた。
目は閉じられていて起きている訳ではなさそうだ。
夢でも見ているのだろうか。
オレはもう一度腰を下ろし袖からサクの手を離すと、その熱い手をそっと握った。