第4章 二人きりのお祭り
確かに。串持って食べる方が普通か。
何も考えず食べてしまってオレも恥ずかしくなる。
よく考えたら顔も近いし…。
「わ、悪い……」
「い、いえ……」
微妙な空気になってしまい、お互い沈黙してしまう。
そのときサクがあ、と声を上げた。
「先輩!手裏剣投げ勝負しませんか?」
それは子供むけのおもちゃの手裏剣を投げて的に当てるゲームだ。
「いいけど、オレに勝てるわけないでしょ」
「えー、わたしだって、手裏剣得意なんですよ!」
メラメラ闘志剥き出しのサクに連れられて店へと向かう。
「だー、おじちゃん、もう一回!」
80対72
僅差で負けるサクが、悔しそうにお金を店員に払う。
いい大人が…と言う顔で店員がはいよ、と手裏剣の入った箱をサクに渡す。
手裏剣は子供用に危なくないようにフニャフニャしていて、確かに投げにくい。
それでもコツを掴んでからは、外すことなく的の中央に当てられるようになった。
オレの横には、ぬいぐるみだの、おもちゃだの、たくさんの景品が積まれている。
「もー、次で最後にしてよ」
燃えるサクにため息をつきながら言うと、「えー!!」とサクが心底悔しそうな顔をする。
取った景品を小さな犬のぬいぐるみ以外返して、またお祭りの雑踏を歩く。
「あー。悔しい……」
「オレに勝つなんて、100万年早いでしょ」
「うー、来年は絶対負かしてやる」
「はいはい」
喉が乾いたからお茶と、お好み焼きや、焼きそば、焼き鳥などを買って神社の奥の少し静かなところまで行き、石に腰掛け休憩する。
一通り食べ終わり、遠くにお祭りの賑やかな音を聞きながらお茶で一服していると、サクがオレの膝を指差した。
「先輩、そのぬいぐるみどうするんですか?」
「あ、そうだった。」
膝に置かれていた犬のぬいぐるみをサクに放り投げる。
受け止めたぬいぐるみをサクが不思議そうに見つめる。
「サクにあげる。」
「え?」
まだ不思議そうなサクが今度はオレを見る。
「サクに似てるから、あげる。」
目をそらしぶっきらぼうに言うと、サクが嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます!
大事にします。」