第4章 二人きりのお祭り
「え?まさか!
そんなことないです!
ただ……」
「ただ何?」
「や、なんでもないです……」
いつもより大人しいサクを怪訝に思いながらも、いつものように歩き出す。
「今日は誕生日のお礼のつもりだから、なんでも好きなもの食っていいよ。」
今日の趣旨を忘れずに言っとかなきゃと、横に並んで歩くサクに言うと、
「え?いいんですか?」
目をキラキラさせてオレを見上げる。
ちょっといつもの調子に戻ってきたサクに、内心安堵しつつ頷くと、サクが何しよ〜、と左右に並ぶ露店をキョロキョロと見回す。
「テンゾウにもお土産買ってかないとな。
ドアノブにでも、ぶら下げといてやるか。」
「そうですね!
何がいいかなぁ。
テンゾウの好きなものって何だろう」
「あー、アイツ、くるみが好きって言ってたよ」
「くるみ?
ご飯ですらない!!
だからあんな細っこいんだー」
「まぁ、でも根から来てすぐよりだいぶ表情柔らかくなったよね。」
「確かに。
最近笑ったりしてくれますもん。」
「お前には苦笑でしょ。
よく呆れられてるじゃない」
「ち、違います!
ちゃんと笑ってるし!めっちゃ笑ってるし!」
「わかったから。
お前、うるさいよ。
てか、店見てないでしょ」
必死で抗議していたサクがハッとなる。
「あー、先輩のせいで見逃した!」
「なんで、オレのせいなのよ」
へへっといたずらに笑ってサクがオレの方を見る。
「じゃあとりあえず、唐揚げ食べたいです!」
「ガッツリだな。」
女の子らしくない、でもサクらしい答えに笑う。
「だって、腹ぺこなんです。
昼は任務で食べ損なっちゃうし、もうペコペコです」
「いいよ。
あ、あそこに唐揚げの店。」
揚げたての唐揚げをたっぷりカップに入れてもらい、サクがかぶりつく。
「先輩も食べます?」
サクが串に刺した唐揚げを差し出してくれるから、口布を下げ、その唐揚げにカプっと噛みつく。
「えっ!?」
サクが耳まで真っ赤にしてオレを見る。
「え?」
「びびび、びっくりした。
先輩が、急に食べるから…。」
「食べるって聞いたじゃない。」
「串を渡したつもりだったから、直接食べると思わなかったんです!!」