第3章 潜入任務 下
仮眠を取るために、家に帰ってくる。
順番に風呂に入り、それぞれの部屋に行く。
しばらく毛布に包まっていたが、なんとなくサクが寝れてないんじゃないかと思い、そっと部屋を覗く。
案の定ベッドはもぬけの殻で、窓が少し空いていた。
任務の後に、気分が高揚して寝れないことはよくあるが、サクの場合は、相手の立場や気持ちになってしまう。
それが子供なら特に。
そのくせ、任務はきっちりこなすから、いつか心が壊れてしまうんじゃないかとたまに心配になる。
屋根の上で、小さくなって座ってるサクの隣にそっと腰掛ける。
肩が触れそうで触れない距離。
「先輩…。」
サクが、オレを見上げる。
「何してんの?」
「月が綺麗だな、と思って…。」
何も写していない目で、サクが呟く。
「そーだね。」とだけ言い、オレもただそこに座っていた。
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翌朝、ご飯を食べ、家を後にする。
忍がいなくなった今、わたしたちにできることはない。
依頼を受けていた街の役場を訪れ、ことの顛末を話し、里へと戻る。
三代目が労ってくれて、その日はそのまま休みになった。
火影室を退室し、二人並んで外に出る。
今日はいい天気で、寝不足の体には、少し眩しすぎる太陽に目をすがめる。
「思ったより、早く済みましたね。」
「アイツが根掘り葉掘りしゃべってくれたからね。」
「そうですね…。」
思ったよりも華奢だった、あの子の体を思い出す。
「サク、お前このあとどうするの?」
先輩に話しかけられ現実に引き戻される。
「とりあえず、眠たいから帰って寝ようかと…。」
「暇ならちょっと付き合ってよ。」
「へ?」
先輩は、ポケットに手を入れて家とは別の方向へ歩き出す。
わたしは慌ててその後を追った。
着いた場所は甘味処。
「…先輩、甘いの好きでしたっけ…。」
「たまには食べたくなるの。」
「そう、ですか。」
近くの空いた席に座り、先輩はお団子、わたしは栗入りのぜんざいを頼む。
すぐに届いた熱々のぜんざいを一口食べると、疲れた体にホッとする甘さが染み渡る。
「あー…、染みる〜。」
思わず口に出すと、先輩が笑う。
「お前はそういうアホ面してる方が、似合うよ。」