第3章 潜入任務 下
「なんかいいことあった?」
「へ?なんでですか?」
「いや、嬉しそうだから…。」
バレてる…。
「カレーがあまりにもおいしいからです!」
気持ちを隠すように適当な言葉を言ってカレーをもう一口頬張る。
いや、ホントにおいしいだけど…。
「ふーん。」
先輩の視線が刺さってる気がして話題を変える。
「今日1日見張ってましたが、わたしの方は動きなしでした。
先輩は大名屋敷どうでした?」
「ああ、屋敷の中、ちょっと気持ち悪いくらい静かだった。
活気がないと言うか…。」
「え?」
「大名が病気で伏せってるらしくて、今は側近の男が実権を握ってるらしいんだが…。
大名には息子もいるのに、妙だ。」
「その側近の男、怪しいですね…。」
「ああ、昼間はガードが固くて入り込めなかったから、今夜、もう一度行こうと思う。
証拠を掴んで一気に叩く。」
「はい!
あ、そういえば今日里から昨日回収したタバコの結果がきて…。
やっぱりあれ、最近出回り始めた新種の薬物らしいです。」
里から届いた紙を先輩に手渡す。
「でも、もしその側近の男がこの薬物を流した犯人だとしたら、いったい何のために…。」
「金か、権力か…。
いずれにせよ、いい理由じゃないでしょ…。」
「そうですね…。
よし!さっさと決着つけて、平和を取り戻しましょう!」
「雇われてる忍の能力もまだ分からないし、突っ走らないでね。」
「う、はい…。」
性格を熟知されてるな…。
片付けを終えて、動きやすいようにいつもの服に着替えると、夜中になるのを待って、屋敷を目指す。
しんと静まり返った屋敷に、窓の鍵を開けて侵入する。
問題の側近の男の部屋。
男はいびきをかいて寝ている。
タンスの引き出しや、押し入れの中をくまなく探す。
「探し物はこれかな?」
いきなり声がしてビクっと体をすくませる。
全然気配を感じなかった。
声の主の男が、透明の袋に入ったあの麻薬を手に持って、窓枠に腰掛けている。
「アンタたち何者?
一般人じゃないよね。
どっかの忍かな…?」
「それをどこで手に入れた?」
先輩が低い声で問う。
「あはは!
これは僕が作ったんだよ。
これを吸ったら、とってもいい夢が見れるんだ。
大名も、屋敷の奴らも、街の人も、みんなこれの虜さ…。」