第21章 帰還
ガチャリ……
なるべく物音をたてないように部屋へと入ると、サクはベッドで丸くなって眠っていた。
起こさないように買い込んだ食料を冷蔵庫にしまい、起きたら食べられるように、だしパックとササミを鍋に入れてうどんの出汁を作る。
キッチンにある窓から夕日が部屋に差し込んで、部屋がオレンジに染まっていく。
誰かと暮らすことは、自分も大切にすることなのだと最近よく思う。
1人だと適当に済ませてしまうごはんも、大切な誰かがいるから、ちょっとくらい疲れていても、その人を思ってちゃんと作って食べる。
サクと暮らし始めて気づくことができたことの1つだ。
とても尊いことだな、と思う。
任務がない日や早く終わった日、たまに父さんも料理を作ってくれた。
小さかったからよくは覚えていないが、父さんも同じ気持ちだったろうか……。
出汁を作り終えると、ベッドのふちに座りサクの顔を覗き込む。
クマのできた目元。
熱のせいかうっすらと汗をかいた丸いおでこ。
ふとんからはみ出ていた手をそっと握ると、いつもより熱い。
ふー、と小さくため息を漏らす。
ムリ、しすぎでしょ。
もっと自分を大事にしてよ……。
声にならない願望を心の中で呟く。
サクの夢を応援してやりたい。
けど、心配でたまらない。
昔からこれ、と思うと周りをかえりみず一人で突っ走る所があった。
もっと上手く周りを頼れたらいいんだろうけど、生い立ちのせいか、元々の性格なのか、全てを一人で背負い込んでしまう。
そしてしんどくても無駄にメンタルが強いから、1人でやりきれてしまうのだ。
だが、今回ばかりはそう簡単にはいかず、体の方が先に音をあげてしまったのだろう。
薬のせいかよく眠るサクの頭をそっと撫でる。
いつの間にか外は太陽が落ち、外はすっかり暗くなっていた。
カーテンを引きに窓辺に立つ。
そのときモゾ、とサクの動く気配がした。