第21章 帰還
しかめ面を作って不機嫌な声をわざと出すが、「ゴメンゴメン」と言いながらもまったく響いてないし、それよりも嬉しさが勝って、両腕を伸ばして抱きしめる。
「おかえり、サク……」
「うん。ただいま」
されるまま体を預けたサクの頭を撫でると、フワリと癖のある金髪がいく筋か指の間をすべって、オレの頬をくすぐった。
「髪、伸びたね」
「うん。
切る暇がなくて、つい伸ばしっぱなしにしちゃった」
そう言って笑いながら、肩に届きそうなくらい伸びた髪を、サクが耳にかけた。
登り始めた太陽の光に、その柔らかな髪が透ける。
「光に透けて、きれい…」
思わずこぼすとサクがはにかむように笑う。
「カカシの髪もだよ。
カカシの髪は、光に当たると星の色みたい」
「それはサクの髪でしょ?」
「そう?星って白い方が多い気がするけど…」
確かに絵だと黄色で描きがちな星だが、実際の空にある星は白く輝くもののほうが多いかもしれない。
サクを抱えたままぐっと上半身を起こす。
「じゃ、どっちも星の色ってことで」
「うん」
嬉しそうに笑うサクをじっと見つめる。
視線に気づき「ん?」とサクもオレを真っ直ぐに見る。
あー、ダメ。
我慢できなくなっちゃう…。
オレはヨイショ、と立ち上がり軽く尻をはたくと、手を引っ張ってサクも立たせる。
「カカシ……?」
不思議そうに見つめてくるサクの耳元に唇を寄せる。
「キス、したい。早く家帰ろ?」
ボンっと音がしそうな勢いでサクの顔が赤くなる。
いつまでたってもかわいいうちの奥さんに、掠めるように頬にすばやくキスすると、オレは家へ向かって歩き始めた。
「カカシ、ここ里の中だよ……」
キスしたほうの頬を押さえながらサクが小走りで追いついてくる。
「ん、だから早く帰ろ」
日の光に身体が少しずつ温められていく。
今日は、いい天気になりそうだ。
ふわふわ浮くような幸せを感じながら、オレはサクの小さな手をぎゅっとにぎりしめた。
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