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星降る丘【NARUTO】

第21章 帰還



東の空が濃い紺色から薄い赤紫に染まる頃、オレは里の門の前まで来ていた。

4月の明け方はまだ肌寒い。
着込んだ外套の前をしっかり閉じて、愛読書片手に、近くの屋根に座りこむ。
完全に日の登らない里はまだ静かで、せっかちな鳥の鳴き声がたまに聞こえるくらいだ。

今日、サクが里に帰ってくる。
離れていた5年は長く、そして終わってみれば、あっと言う間だった。
暗部から上忍師となり、そして初めて部下となった子供達もそれぞれの道に進み、また上忍として任務をこなす日々。
充実はしていたが、やはりサクがいないと物足りなかった。
あの元気の塊みたいなサクが近くにいるだけで、オレはいつだって満たされていたのだと、いなくなって改めて気付かされたのだ。
側にいないのに結婚なんてバカ気てると同期にも言われたが、結婚したことに後悔は微塵もなかった。
紙の上の小さな契約だけど、それがあのときのオレの精一杯の愛情表現だった。
想いはずっと変わらないということを、ただ伝えたかった。
左手の鈍く光るリングは随分傷だらけになってしまっていた。
夫婦になったからって、元々一緒に住んでいたから変わった気はしていなかったが、これからは何か変わるのだろうか…。
どっちでもいい。
オレにとっては、サクと一緒ならそれらは大したことではないからだ。
ただ、サクが帰ってくるたび小さなことに『これ、夫婦っぽくって嬉しい』と笑うから、そういうことをたくさんできたらいいな、と思う、

サクの笑顔に早く会いたい。

夜にあちらを出ると言うから、朝になってからゆっくり帰ってこいって言ったけど、サクのことだから絶対夜には出ているだろう。
何もなければもうすぐ里に着くころだ。
バカみたいにワクワクしてしまう自分に呆れてしまう。

全然集中できなくて開いていた本をカバンにしまって寝っ転がると、目を瞑った。
しばらくうつらうつらしていると、自分の上に影が落ちて慌てて目を開く。

「!??」

ずしっと影がそのまま落ちてきて、思わずうっとうめく。
ぎゅうッとしがみついてきた懐かしい匂いの持ち主は、すぐに満面の笑みをまとった顔を上げた。

「ただいま!!!」

「……今、一瞬息がとまったんだけど……」

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