第18章 幸せ溢れる日
「ハナ、もしかして、もしかしなくても、結婚式をしようとしてくれようとしてる?」
わたしの普段はほったらかしのまつ毛を丹念に上げながら、ハナが口に笑みを浮かべる。
「だって、アンタたち、ほってたら絶対やらないんだもん。
お祝いしたいわたしたちの気持ち、無視しないでよね。」
「ハナ…」
恨み言のような言葉とは裏腹にハナの顔はすごく嬉しそうで…。
嬉しくて、胸が熱くなり、目に涙が盛り上がってくるが、「ダメ!!」とハナがいきなり強く言うから、一瞬で涙が引っ込む。
まつ毛についた涙をティッシュで拭かれ、「化粧が崩れるから、今は絶対泣かないで!!」と強く言われる。
「…はい……」
ハナの剣幕に気圧されて黙り込み、おとなしく座ってされるがままになる。
「ハナ…?」
「ん?」
「ありがとう…」
「うん。
でもさ、まさかアンタに先越されるとはねー」
はあ、とハナがわざとらしくため息をつく。
「わたしも自分が結婚するなんて、思いもよらなかったよ。」
目を合わせて笑い合う。
「サク、おめでとう」
親友で、しっかり者のお姉ちゃんのようで、なんでも話せて、カッコ悪いところも全部許してくれる。
そんなハナに出会えて、よかった。
また鼻の奥がツンとして、慌てて涙を堪える。
「もう、泣かせないでよ」
悪態をつくと、ハナが笑った。
最後に口紅を塗ってくれたハナが、確かめるようにわたしの全身をくまなくチェックする。
「よし!」
そう言って、わたしを姿見の前に連れて行ってくれる。
「わ、あ…」
まるで自分じゃないような姿に、思わず感嘆の声が漏れる。
「サク、綺麗だよ」
最後に頭にベールをピンで止めつけたハナがニッコリ微笑む。
「ありがとう…。
でも、この姿でみんなの前に行くの、なんか照れるな…」
「いつも支給される服で、スカート履いてるとこすら見たことないもんね。
ま、それがサクらしくていいんだけどさ。
さ、みんな待ってるから行くよ」
「うん…」
なんか、緊張してきた。
当たり前だけど、せん…、じゃなくて、カカシもいるんだよね…。
ドキドキしながら慣れないヒールで歩いていくと、会場と思しき丘の上には、思っていたよりたくさんの人の姿が見えた。