第2章 潜入任務 上
「賑やかな街ですね。」
周りを観察しながら街中をくまなく歩く。
「うん。でも、やっぱり物騒な奴らがちらほらいるね。」
「はい…。」
「酒場に行くか。
何か情報が得られるかも。」
コクリとうなずき、近くにあった大きな酒場に足を踏み入れる。
中はかなり賑わっていた。
なんとなく、目つきの悪い、柄の悪そうな男数人が女を囲ってたむろする座敷の後ろの席に座り、酒と、ご飯がわりのおつまみを何品か頼む。
「サク、酒飲めるの?」
「初めてです!
酒場でお酒頼まないのも変かと思って。」
「ちょ、一滴も飲むなよ…。」
そう言って、水の入ったグラスをずい、と寄せてくる。
「えー、せっかくなのに…。」
口を尖らせると、はぁー、と大きなため息をつき、睨まれる。
「酔ったら置いてくよ。」
「酔わないから、大丈夫ですよーだ。」
べーっと舌を出すと、また睨まれた。
しばらく楽しく談笑していたうしろの男女が、酔いが深まってくると変な臭いのするタバコのようなものを吸い出した。
その後しばらくすると、異様なほどにハイになって、女の肩を抱いて店を出て行く。
先輩と目配せし合い、店員が片付ける前に吸い殻を何個かくすねる。
「サク、追うよ。」
「はい!」
気付かれないように、少し後ろを歩く。
男たちは、アパートの一室に入っていった。
「乗り込みます?」
「いや、今日は帰ろう。
こいつらがコレを買う日があるはずだ。
それで、コレを売ってる奴が炙り出せる。」
「そうですね。」
わたしたちは家に向かって歩き出す。
なんだかさっきからフワフワする。
「あのさ、サク。」
「な、何ですか?」
「お前、千鳥足になってるから。」
「へ?」
その瞬間自分の足につまずいて転びそうになる。
「わっ!!」
思わず目を瞑ると、腕をひっぱられて肩を抱かれ支えられる。
「忍が何もない所で転ばないでよ。」
「す、すみません!」
慌てて自分で立とうとするが、足に思うように力が入らない。
はぁ、と先輩のため息が聞こえ、いきなりおんぶされる。
「だっ大丈夫です!歩けます!」
慌ててそう言うが、「酔っ払いは大人しくおぶさってて。」と言われてしまう。
「…すみません。」
「うん。
お前、酒禁止ね。」
「はい…。」