第2章 潜入任務 上
温かな先輩の背中におぶさって、一生家に着かなければいいのにと思った。
家に着き、ベッドに転がされ、ご丁寧に靴まで脱がせてくれる。
「もう今日は寝ろ。」
「…すいません。
あの、でも、やっぱりわたし下で寝ます。」
「だからいいって…。」
やっぱり、申し訳ない…。
出て行こうとする先輩の服を少し掴んで引き留める。
「じゃ、やっぱり一緒に寝ませんか?
ベッド広いし、野宿だったら、一緒に寝るのも普通だし…。」
後ろを向いたままの先輩がため息をつき振り向くと、わたしの手首を乱暴に掴み上に覆いかぶさる。
息がかかるほどの距離にある先輩のきれいな顔を、驚いて見つめる。
「あのね、オレも一応男だから。
こういうことされたくなかったら、同じベッドで寝ようなんて、男に言っちゃダメなの。」
そう言うと、パッと先輩が手を離しベッドから起き上がる。
そして、バタンと部屋から出ていってしまった。
…ビックリした。
あんな乱暴な先輩は初めてだった。
掴まれていた手首が、いつまでもジンジンと痛かった。
熱いシャワーを頭から浴びる。
あいつ、ほんとバカ。
無防備すぎ。
何が、一緒に寝ましょうだ。
男を知らないにも程がある。
イライラに任せて壁をドンと叩く。
強く握っていた拳を開くと、その手には二本やすやすと捕まえられる、サクの細い手首の感触が強く残っていた。
強張ったサクの顔。
はぁ…、とため息をこぼし、それらを頭から追い払うように乱暴に髪を洗った。