第2章 潜入任務 上
ーーー当日。
昨日は緊張でほとんど眠れなかった。
先輩と一緒の家で暮らすことになるなんて…。
い、いやいや、任務に集中しなきゃ。と自分の中の煩悩を追い払うように頭を振る。
でも道中、同じようなことをグルグルと考えてしまった。
街が近づいてくると、忍と分からないように一般の人らしい服に着替える。
「…!?」
そして、先輩の姿を見て思わず固まってしまう。
街の人に見えるように口布をはずしているのだが、その顔がカッコ良すぎる。
「何…、どっか変?」
後ろを確認したりしてる先輩に、「いえ、口布してない姿が新鮮で…。」と答えると、口元を押さえ、「ああ。落ち着かないんだよねぇ。」と困ったように口を手で覆う。
「写輪眼も隠したほうがいいよね。
目の傷は、昔、熊に襲われたってことでいっか。」
そう言って片目を瞑る。
あまりのカッコ良さに、心臓がバクバク跳ねる。
ああ、この任務、無事に終わらせられますように!!
必死で祈りながら、街への道を歩いた。
街に着く頃にはすっかり日も暮れていた。
とりあえず、街の外れのわたしたちが住むことになっている家に向かう。
「ここ…だね。」
地図を見ながら先輩が指差したのは、街の外れにある小さな一軒家。
ドアを開けて入ると、キッチンと小さな居間。
奥にお風呂とトイレ。
そしてもう一部屋が、大きなベッドが一つある寝室。
ここで、今日から先輩と暮らすのか…。
そう思うと、にわかに緊張してしまう。
先輩は、寝室や居間の襖を開けて中を確認している。
「布団、ないね…。」
「え?」
「や、ベッドで2人で寝るわけにいかないでしょ。
布団、探したけどないみたい。
ま、サクがベッド使えばいいよ。
オレは居間でごろ寝するから。」
「や、そういう訳にはいきません!!
先輩がベッド使ってください!」
慌てて言うと、「女の子床で寝かして自分だけベッド寝るわけにいかないでしょ。」と、ポンと軽く頭に先輩の手が置かれる。
その瞬間顔に熱が一気に集まるのがわかる。
「…っ!!!」
いつもは女の子扱いなんてまったくしないのに!!
「とりあえず、偵察がてら、飯行くよ。」
先輩はそんなわたしに気づく様子もなく、とっとと玄関の方に行ってしまう。
これは任務任務任務!!
自分にそう言い聞かせて、慌てて先輩の後を追いかける。
